ブリューゲル展 東京都美術館 2018 近年稀に見る上質な展覧会、行ってみるべきです。

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ヤン・ブリューゲル1世「卓上の花瓶に入ったチューリップと薔薇」ブリューゲル展西洋美術
ヤン・ブリューゲル1世「卓上の花瓶に入ったチューリップと薔薇」ブリューゲル展
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近頃稀に見る、質の良い展覧会

東京都美術館のブリューゲル展は、見ごたえのあるいい展覧会でした。絵に少しで興味がある人は是非、見てみて下さい。名匠ピーテル・フリューゲル(父)からはじまる4代ひ孫までの、絵を展示していました。ヤン・ブリューゲル1世・2世の、「ビロード」と評された、美しい油絵。質の高い絵画が集まっていて、近頃稀に見る良い展覧会でした。

東京会場の後は、豊田・札幌・広島・福島と巡回するので、今年絶対に見てもらいたい展覧会でした。

なお2月18日まで、一部会場では、写真撮影が許可されていました。

もう出逢えない?個人蔵の絵画

作品リストを見ると、2~3の作品を除き「個人蔵」となっていました。個人蔵の作品が美術館に展示されるのは、所有者の意向に左右されやすい。また別の展覧会で見れる確率は低いです。美術館所蔵ならばWEBで画像が見れるようになってきました。個人蔵はWEBの恩恵にあずかれません。当然画集なのへの掲載の機会も美術館収蔵品より難しくなるので、この展覧で見たブリューゲル一族の絵画は、もう2度と見れないかも知れないのです。念のため図録は買っておきました。

展覧会の構成が、絵のテーマ別

今回の展覧会は、年代別に古い作品からはじまりじだいが下がる構成でもなく。ブリューゲル一族の一人一人に、コーナーを区切った展覧会でもありませんでした。宗教画・静物・農民画と絵の題材別に構成されていました。

第一章 宗教と道徳

第二章 自然へのまなざし

第三章 冬の風景と城壁

第四章 旅の風景と物語

第五章 寓意と神話

第六章 静物画の隆盛

第七章 農民たちの踊り

画題別とはいえ、第一章では、ピーテル・フリューゲル1世・父の、義理の父ピーテル・クック・ファン・アールストの三連祭壇画や、この偉大な先輩なくして存在できなかった、ヒロエニムス・ボスの版画など、導入になっていました。

ブリューゲル展 東京都美術館

ブリューゲル展 東京都美術館

ブリューゲル一族について、絵を見ながら考えてみた。

初代のDNAは2代まで?

ブリューゲル一族の初代、ピーテル・フリューゲル1世・父は、「ヒロエニムス・ボス2世」の触れ込みで版画家デビューをしました。先輩のボスがいたので、版画で腕を振るい独自の画風を確立しました。ボスの残した豊かな発想の遺産を、初代ブリューゲルは自分らしく使いました。

ボスと初代ブリューゲルを比較すると、ボスよりは全体的に真面目で、理路整然としています。版画「最後の審判」でも「金銭の闘い」でもカオスをカオスと捉えられなくて、絵画の構成が、ボスよりもスッキリしています。補助線が引ける画面構成です。

初代ブリューゲルと周辺の画家を比べると、油絵は技術力が卓越しています。それにもまして、風景の中に描き込む人物が良いのです。大自然の中にいる農民たち、作為的ではないのだけれど、目を向けると印象に残ります。

初代のピーテル・フリューゲル1世・父は、美的センスが他の画家と違っていたんだと、感じました。この美的センスは、2代目ヤン・ブリューゲル1世・父まで引き継がれているようです。ヤンの系統は華麗で精密な宮廷絵画を受けついて行くのですが、孫のヤン・ブリューゲル2世・子の絵画構成は、御初代様とくらべると、緊張感と癖がなく違う気がします。

細部まで手を抜かない(晩年のティツィアーノとか印象派と対極)、ブリューゲル家の技術は引き継がれて行きました。それと、画家の家系の女性と結婚しています。そこ重要!歌舞伎俳優も昔は芸者、少し前までは宝塚女優、今では一流の女優か日舞の舞踊家、普通の女の子とは結婚してくれないものね。

御初代様 ピーテル・フリューゲル1世・父

ピーテル・フリューゲル1世・父の代表作、「ベベルの塔」大・小「イカルスの墜落のある風景」「雪中の狩人」…有名作の展示はありませんでした。版画も含めて少な目です。油絵は「キリストの復活」(工房との共作)「種をまく人のたとえがある風景」(ヤーコブ・グリンメルとの共作)と地味目の作品でした。

やはり良いです。キリストの復活をドラマティックに描いている訳ではないのですが、マグダラのマリアにとの再会はこうなのかなと思わせました。

長命ではありませんでしたが、絵画の可能性を広げてくれた画家でした。

「御初代様」というのは昨年の大河ドラマ「おんな城主直虎」で柴咲コウさんが、井伊家の初代のことを呼んで折につけ祈っていたのに、ちなんで。書いているうちに「御初代様」と呼びたくなりました。

型紙で量産ピーテル・フリューゲル2世・子「鳥罠」

御初代様の息子、ピーテル・ブリューゲル2世・子と、ヤン・ブリューゲル1世・父は、幼くして父を失いました。兄弟とも父親の模作を作るところから、キャリアをスタートしました。弟はイタリア留学をし、自分なりのスタイルを確立し成功しました。

兄のピーテル・ブリューゲル2世・子は、凡庸だったのか、父の模作とその派生作で一生を終わりました。会場で「鳥罠」の解説を読んでびっくり。穴の開いたカルトンを当て、粉で印を付けたそうです。もう少しオリジナリティを出さんか!思いますが。当時は御初代様そっくりな油絵が、中産階級でも買えて喜ばれたそうです。50枚現存です。

昨年の大エルミタージュ美術館展の「鳥罠」と図録で比べて、建物の形と位置、スケーターの格好と位置、木の位置などもろもろそっくりです。
大エルミタージュ美術館展 六本木 森アーツセンターギャラリー2017 巨匠の名画を観る愉楽に心を遊ばせる。

大エルミタージュ美術館展 六本木 森アーツセンターギャラリー2017 巨匠の名画を観る愉楽に心を遊ばせる。
これは凄いことです、エルミタージュの常設展示が85点 今回の大エルミタージュ美術館展は、凄いです。これはぜひ行くべきです。ロシアのペテルブルグにある、屈指のコレクションをもつエルミタージュ美術館で、常設展示されている油絵だけ、展示された美...

 


「鳥罠」は左側の作品
御初代様の作品をヨーロッパ中に知らしめたのは、凡庸な兄の働きと思います。そこは労ってあげましょう。

ピーテル・フリューゲル2世「屋外での婚礼の踊り」ブリューゲル展

ピーテル・フリューゲル2世「屋外での婚礼の踊り」ブリューゲル展

「ビロードのブリューゲル」ヤン・ブリューゲル1世・父の系統

弟のヤン・ブリューゲル1世・父の系統は、素敵な絵が多すぎて、どれが一番と言えません。会場で「宝石みたいな絵」と思いながら鑑賞していました。ビロードのような絵を描くので「ビロードのブリューゲル」と呼ばれたそうです。納得!宮廷画家となって、作品が外交で贈られました。美しい絵画は外交儀礼に使えますものね。

ブリューゲル一族といえば、花の絵です。ヤン・ブリューゲル1世・父は、花を希少性の高さで選び、直接花を見て描くため、庭園から庭園と渡り歩き、季節の異なる花を描くので入念に計画し取り組みました。画家たちは常に複数の花の静物画に取り組む傾向があったそうです。

有名工房の画家ならば、工房がストックした過去のデッサンで、さっさとっ描くのかと思っていましたが、花を求めて庭園めぐりをしていたのですか。

ヤン・ファン・ケッセル1世「蝶・コウモリ・カマキリの習作」ブリューゲル展

ヤン・ファン・ケッセル1世「蝶・コウモリ・カマキリの習作」ブリューゲル展

気になった一枚

犬が2本足で立っている。ヒロエム・ボス「告解日の火曜日 ワッフルを焼く人のいるオランダの厨房」

公式に画像がないので、展覧会で見て欲しいのですが、暖炉の前に人が集まり、暖炉でワッフルが焼けるのを待っている絵です。人物は壁際にいて手前が空いているのですが、会場で見たとき、右中央手前に「モンスター」がいたのです。会場でよく見えなくて、家に帰って図録を見て驚きました。二本足で立つ洋服を着た犬でした。

このtweetの3枚目の写真です。画面が斜めだけれど参考にしてください。手前に何かいるのが2本足で立つ犬です。

ボスのモンスターについてこのエントリーで少し、考察をしました。
バベルの塔展 東京都美術館2017 ボスとブリューゲルの名画を「ボスモン」が盛り上げていました。


ベルギー奇想の系譜 Bunkamuraザ・ミュジアム 2017 ボスから現代芸術まで、ベルギーの奇妙な絵を集めました。 ボスと弟子のモンスター運用法の違いについての考察

ベルギー奇想の系譜 Bunkamuraザ・ミュジアム 2017 ボスから現代芸術まで、ベルギーの奇妙な絵を集めました。
大国に負けない、ベルギーの芸術。 大国に挟まれた小国が、存在感を出すのは、ひとつは高い文化を持つことです。中世のフランドル時代からそれが成功している、極めて稀な国がベルギーです。絵画を見ているだけでも、隣国の大国フランスとも一線を画します...

この絵は現実の日常世界の絵なので、モンスターを出すわけにはいかないのでしょうが、犬のいる位置がモンスターが描き込まれる位置なのです。犬が服を着ているのは、寒いオランダだからの風習だと思います。犬が服を着るのがどうのこうのとは、言えません。2本足で立つのは、ボス個人のモンスター好きが高じてとしか思えないのですが。

犬猫は、時として2本足で立ったり歩いたりしますが、普通のことではありません。楽しみが少ない時代に、ワッフルを焼く行事は、人間も犬もアドレナリンがドバーっとでる、イベントだったでしょう。「ワッフルの焼け焦げ欲しー。ちょーだい!ちょーだい!」と犬が興奮しているのを、2本足で立つことで表現しているボスは、モンスター寄りの人なんでしょうね。

我らが、安藤広重、歌川国芳なら、部屋の片隅で仔犬同士でじゃれる、うら若き女性の膝の上で寝ているのが犬の位置です。これと比べるとボスの特異性がわかります。
帰ってきた浮世絵動物園 太田記念美術館 2017動物たちが可愛くて、楽しい浮世絵展でした。

帰ってきた浮世絵動物園 太田記念美術館 2017動物たちが可愛くて、楽しい浮世絵展でした。
動物が可愛くて、楽しい浮世絵展覧会。 幕府による風紀取り締まりが、厳しくなり、歌舞伎の芝居絵や遊女の絵が描けなくなったとき、浮世絵師たちは動物擬人化をしました。歌川国芳には、歌舞伎役者が鯉の"人面魚”になった浮世絵があります。遊女も客も廓...
アブラハム・ブリューゲル「果物の静物がある風景」ブリューゲル展

アブラハム・ブリューゲル「果物の静物がある風景」ブリューゲル展

2017-18年は、北方ルネッサンスが大挙して来ます。

ベルーギー・オランダあたりの北方ルネッサンス・マニエリスムが大好きでございます。近代の画家クノップフなどベルギーの近代の画家も好きです。ハプスブルク家のお抱えの画家で、人間の顔を花・果物・本などで描いた面白絵画で有名なアンチンボルトが、個展とパトロンのルドルフ2世コレクション展両方で見られます。今年はブリューゲル一族が都美術に来ます。スケジュールを簡単に記しておきます。

バベルの塔展

2017年4月18日(18)~7月2日(日)東京都美術館
2017年7月18日(火)~ 10月15日(日)大阪国際美術館

バベルの塔展

バベルの塔展 東京都美術館2017 ボスとブリューゲルの名画を「ボスモン」が盛り上げていました。
ブリューゲルの「バベルの塔」は、美しい絵でした。 東京都美術館のバベルの塔展に行ってきました。2階ワンフローアーを、ピーテル・ブリューゲル1世作の「バベルの塔」"小バベル”(ボイスマンス美術館所蔵)一枚のために、使う展示でした。 ...

アンチンボルト展 2017年6月20日(火)~9月24日(日)国立西洋美術館

アンチンボルト展

アンチンボルト展 国立西洋美術館 2017 皇帝のお気に入り画家は、真面目に笑いを捕りに行きます。
はじめの一枚「四季」でその精巧さに驚く! 自然主義精密描写の、アンチンボルト。 展覧会場の自動ドアが開くと、アンチンボルトの油絵「四季」が一枚だけ展示されていました。この一枚で鷲づかみされました。醜い爺さんの顔なのに、林檎・葡萄・さ...

ベルギー奇想の系譜

2017年3月18日~5月7日 宇津宮美術館
2017年5月20日~7月9日 兵庫県立美術館
2017年7月15日(土)~9月24日(日)Bunkamuraザ・ミュジアム

ベルギー奇想展

ベルギー奇想の系譜 Bunkamuraザ・ミュジアム 2017 ボスから現代芸術まで、ベルギーの奇妙な絵を集めました。
大国に負けない、ベルギーの芸術。 大国に挟まれた小国が、存在感を出すのは、ひとつは高い文化を持つことです。中世のフランドル時代からそれが成功している、極めて稀な国がベルギーです。絵画を見ているだけでも、隣国の大国フランスとも一線を画します...

ルドルフ2世の驚異の世界展

2017年11月3日(金・祝)~12月24日(日) 福岡市博物館
2018年1月6日(土)~3月11日(日)Bunkamuraザ・ミュジアム
2018年3月21日(水・祝)~5月27日(日) 佐川美術館

ルドルフ2世の驚異の世界展

ルドルフ2世の驚異の世界展 Bunkamuraザ・ミュジアム 2018 引きこもり・オタク・錬金術マニアの、皇帝が集めたコレクション。
アンチンボルト、ヤン・ブリューゲル親子が、空いている会場で、ゆっくり見れます。 ルドルフ2世って誰?入り口でビデオ解説しています。 ビデオコーナーは展覧では、つきものです。ルドルフ2世の驚異の世界展では入り口付近と、出口の2か所でや...

ブリューゲル展画家一族150年の系譜

2018年1月23日(火)~4月1日(日)東京都美術館
豊田市美術館 2018年4月24日(火)~ 7月16日(月・祝)
札幌芸術の森美術館 2018年7月28日(土)~ 9月24日(月・祝)
その後広島県・福岡県を巡回

真打登場!ルーベンス展

ルネッサンス・マニエリスムより時代が下りますが、バロック絵画といえばこの人、ルーべンスの展覧会がこの秋、あります。

ルーベンス展 2018年10月16日(火)~2019年1月20日(日)国立西洋美術館

お得情報

2月18日まで一部作品 2階の6章・7章の写真撮影ができます。

相互割引 半券提示で100円引きになります。

プラド美術館展 国立西洋美術館
ルドン秘密の花園展 三菱一号館美術館
至上の印象派展 国立新美術館

ブリューゲル展 概要

画家一族 150年の系譜 ブリューゲル展

w e bサイト  http://www.ntv.co.jp/brueghel/
twitter 「ブリューゲル展」 https://twitter.com/brueghel2018
twitter 「ブリューゲル展」待ち時間 https://twitter.com/bru_konzatsu
会  期 2018年1月23日(火)~4月1日(日)
会  場 東京都美術館
休 館 日 月曜日 2/23(月)、2/12(月)は開室
開館時間 9:30‐17:30 金曜日は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)
入 場 料一般1,600円(1,400円)大学・専門学校1,300円(1,100円)
高校生800円(600円)65歳以上1,000円(800円)中学生以下無料
( )内 団体20名以上
各種障がい者手帳お持ちの方は、本人と介護者一人まで無料
詳細はサイト

巡回

豊田市美術館 2018年4月24日(火)~ 7月16日(月・祝)
札幌芸術の森美術館 2018年7月28日(土)~ 9月24日(月・祝)

上記の会期終了後、広島県、福島県に巡回予定です

東京都美術館アクセス方法

webサイトweb http://www.tobikan.jp/index.html
twitter https://twitter.com/tobikan_jp
facebook https://www.facebook.com/TokyoMetropolitanArtMuseum
住   所東京都台東区上野公園8-36
電   話 03-3823-6921(代表)
入 館 料無料 各展覧会に入場料がかかります。
開館 時間9:30~17:30 特別展開催中の金曜日は20:00まで
全館休館日毎月第1第3月曜日(祝日振替休日の場合翌日)
特別展・企画展 毎週月曜日(祝日振替休日の場合翌日)
整備休館 1/11~18 7/9~16
年末年始 12/31~1/1

アクセス方法 webページ

JR上野駅公園口徒歩7分
東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口徒歩10分
京成線京成上野駅徒歩10分

東京都美術館には駐車場はありません。

東京都台東区上野公園8-36

ヤン・ブリューゲル1世「卓上の花瓶に入ったチューリップと薔薇」ブリューゲル展

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