世界が注目、日本の家。
終戦後から現在までの住宅についての展覧会です。
公団・プレハブ住宅から、意識高い系の人が住む、尖り過ぎた住宅まで、戦後の家の模型・設計図・映像資料の展示と、清家清設計の「斎藤助教授の家」の実物代模型が展示されています。
昨年からローマ・ロンドンで好評のうち終わった、展覧会の日本巡回。 途中のコーナーから写真が撮れます。熱心に写真を撮っている、建築科とおぼしき女子大生が見受けられました。普通の美術展とは違う雰囲気で、今流行りの意識高い系の人の子供ずれが多かったです、近く模型展示されている家を注文しそうです。
展覧会の構成は、戦後の復興期に考え出された量産型の家。日本の建築の特徴であるコンクリート打ちっ放し住宅の紹介。その次のコーナーから、写真が撮れます。現代の日本の家の諸相について、模型・写真そして、当展の目玉、清家清「斎藤助教授の家」の実物大の再現が展示されています。東京展だけの展示です。
日本の建築家が、海外で注目されている理由として主催者はこうのべています。
1950年には建築士法が施行され、多くの個人住宅が「建築家」によって設計されるようになりました。
欧米の多くの国では、建築家の仕事の中心は公共建築なのですが、日本の場合は、一人の建築家が、公共建築も個人住宅も手がけることが相当数あります。建築界で最も栄誉ある賞といわれるプリツカー賞の日本人受賞者が、多数の住宅建築を手がけているというのは、実は結構驚くべきポイントなのです。
日本の家展 展覧会についてhttp://www.momat.go.jp/am/exhibition/the-japanese-house/より

日本の家展 東京国立近代美術館

日本の家展 東京国立近代美術館
感想!"寝殿造りコンプレックス”未だ克服せず!
モダン建築、良いデザインだなと感服する物もありますが、私はクラッシック志向なので、積極的に行きたくなかったのですが、仕事のために行きました。鑑賞中、伝統建築を無視ないし曲解していることに、何度かクラッと腹が立ちました。今後の日本の住宅建築の未来を示唆する展示で、新たな知見もありましたので、行って勉強になりました。

日本の家展 東京国立近代美術館

日本の家展 東京国立近代美術館
古代から変わらない、日本人と家の特徴
かねてから、思っていたのですが、日本人って"寝殿造り”に住みたいとDNAが思っていませんか?縄文時代に高床式住宅が持ち込まれた時から、竪穴住居より高床式が上という意識が変わってないです。日本は湿度が高いので、床を上げる建築になった説が有力です。靴を脱いで素足で歩きまわる開放感が止められんのです。
平安時代の寝殿造りで決定的になった、開口部が大きさへの日本人の固執は、今も続いています。大形ガラスを入れた2階のリビングは、現代の家では定番となっています。会場の家は北海道の開拓者の家以外、開口部が大きい家ばかりでした。その極地といえる、ガラスの箱を積み上げた家、藤本壮介「Housu N4」2011の展示がありました。美しいし引っかかる家、実際に住んでいるのか?
清家清の家で、幼児が走り回る。
一歳くらいのお嬢さんを連れた夫婦が、来ていました。清家清「斎藤助教授の家」に上がったら、お嬢さんが猛然と駆け出して廊下のとっつきまで行き、家の中をぐるぐる回りだしました。日本人だなと思いました。座敷に子供を連れて行くと、子供はまず走り回るものです。
そのあと来た外国人のグループは、上がるのを躊躇していました。生まれてはじめて、人前で靴を脱ぐはめになったのか?対照的な光景でした。
明治時代から、住宅の洋風化と、土足化が試みられました。東宮御所として今の迎賓館、赤坂離宮が建てられました。大正天皇・昭和天皇ともに短期間でここを出ました。日本人には本格的な洋風生活になじめなかったのです。素足で畳や板の間を歩く感覚を捨てられないのでした。
清家清「斎藤助教授の家」は1952に建てられました。1970年代まで日本人は着物優位な生活を送っていました。伝統が長いので、洋服より着物が楽。和裁が出来る人が多く、仕立て直しが自分で出来て、着物の方が経済的な時代でした。畳の上で着物で暮らす人が多かった時代に作られた家です。
低座いすが置かれています。現代では何であるのか分からない家具です。本来はこの上に正座すると普通のいすに坐った人と視線の高さが同じになります。腰を掛けることもできる、いすとして作られました。着物を着ても普通のいすの方が楽なので、存在意義が薄れています。
ここで印象的なのが畳が乗った台です。庭に持ち出して夕涼み台として使っている写真も残っています。腰かけること出来るし、畳の間として縫物もできるし、横になれば眠ることが出来る。何処でもミニ和室的です。
家に畳のない家が増えています。畳に上で和裁をすることが一般的だった時代は、畳は必須でした。今はお茶でも習ってなければ、畳の部屋は使いませんものね。「斎藤助教授の家」は過渡期の家と言えます。

清家清「斎藤助教授の家」日本の家展 東京国立近代美術館

清家清「斎藤助教授の家」日本の家展 東京国立近代美術館

清家清「斎藤助教授の家」日本の家展 東京国立近代美術館
日本の家の未来
ヨーロッパの建築も行き詰まってますが、日本も行き詰まっています。
世界で評判の日本の家ということで、バカンスで来ている白人の建築家とおぼしき男性が、食い入る様に展示を見ていました。ハコしか作らせてもらえないヨーロッパの建築家と、外装ほかインテリア家具そして、中に住む人の暮らしまでデザインしてしまう日本の建築家。クライアントの哲学までデザインできることは、魅力的かと思います。
日本は、公共の建物では、靴履き、家では靴を脱いで暮らす。二重生活を送っています。明治時代からの積み上げで、靴を脱ぐ生活は捨てないと予想できます。伝統的に収納家具以外の家具を使いこなせない日本人は、洋式の生活をしていても、ソファーセットで絨毯にしゃがみテーブルで食事をする、生活を送っています。
未来はとっちに転ぶのか。
今後日本人の家はどうなるのか、一見西洋化が進んでいるように見えるけれど、頑固に古い行動様式を守っています。どちらの民族でも、衣食住の中で住が民族の古層を残し、時々反乱を起こすようです。靴を穿く公共生活と、靴を脱ぐ自宅との二重生活がこの先どうなるのか。
日本人は家具の使い方が下手です。伝統的に家具をビルトイン化(例押し入れ)するし、家具を多く持っていません。模型や写真を見て思うのは、家具が少ないな。実際に住むと物があふれたら、どうなるのか分かりません。多少散らかしても、見られる部屋にするのが伝統です。日本人が手を抜いても、美しく見える暮らしにするには、まだまだ変化して行きますでしょう。
日本の住宅には何が置かれたのか?

大河ドラマに引っかけて、日本人と畳に坐ることを考察しています。

日本の家 1945年以降の建築と暮らし展 概要
日本の家 1945年以降の建築と暮らし
The Japanese House : Architecture and Life after 194
w e b: | http://www.momat.go.jp/am/exhibition/the-japanese-house/#section1-1 |
会 期: | 2017年7月19日(水)~10月29日(日) |
会 場: | 東京国立近代美術館 |
休 館 日 : | 月曜(9/18、10/9は開館)9/19(火)、10/10(火) |
開館時間: | 10:00-17:00(金・土曜は10:00-21:00)入館は閉館30分前まで |
入 場 料 : | 一般1,200円(900円)大学生800円(500円)( )内は20名以上の団体 無料 高校生以下および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者1名、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等をご提示ください。 キャンパスメンバーズ加入校の学生は、学生証の提示で割引料金500円 詳細はサイトで |
特 典: | 本展の観覧料で入館当日に限り、「MOMATコレクション」(4-2F)、「彫刻を作る/語る/見る/聞く―コレクションを中心とした小企画」(2Fギャラリー4)もご覧いただけます。 使用済み入場券で、入館当日に限り再入場が可能です |
東京国立近代美術館工芸館 アクセス方法
webサイト: | web http://www.momat.go.jp/am/ twitter https://twitter.com/MOMAT60th Facebook https://www.facebook.com/momat.pr |
住 所: | 東京都千代田区北の丸公園3-1 |
電 話: | 03-5777-8600(ハローダイヤル) |
アクセス方法 地下鉄 東京メトロ東西線 竹橋駅 1b出口 徒歩3分
日本の住宅には何が置かれたのか?


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