動物が可愛くて、楽しい浮世絵展覧会。
幕府による風紀取り締まりが、厳しくなり、歌舞伎の芝居絵や遊女の絵が描けなくなったとき、浮世絵師たちは動物擬人化をしました。歌川国芳には、歌舞伎役者が鯉の”人面魚”になった浮世絵があります。遊女も客も廓で働く人も、”雀”になった浮世絵もありました。動物を使い巧みに使い、お上の目をくらましたのです。
擬人化物だけでなく、浮世絵には動物たちが沢山登場しています。江戸時代にも身近にいた、猫、犬、金魚、兎、蛙、縁起物の鶴、亀、虎、龍、そして当時まだ珍しかった、象など沢山の動物たちが、太田記念美術館で待っていました。
太田記念美術館はtwitterで展示作を、紹介しています。行けなかった人も、アカウントを持ってなくても、リンク先から見れます。 https://twitter.com/ukiyoeota
ついに登場!十二支の動物たちが合体した最強?生物「家内安全ヲ守 十二支之図」。国芳の門人、歌川芳虎の作品です。どこに十二支が隠れているか、探してみてください。原宿の太田記念美術館で開催中の「浮世絵動物園」展にて、5/28まで展示中。 pic.twitter.com/sivBiTMrC5
— 太田記念美術館 (@ukiyoeota) 2017年5月3日
歌川芳虎「家内安全ヲ守 十二支之図」 展覧会のキーヴィジュアルにもなっています。キモいのかカワイイのか微妙な動物です。
無邪気で可愛いい動物たち、とっても計算されています。
今回、浮世絵はよく考えられて、作られてるなーと思いました。やんごとなき方にも、古典籍の知識を、縦横無尽に使いこなす知識人にも、歌舞伎の教養があった平均的な町民の皆様にも、そして教養も知識もないが、本能的な感性を持った幼児にも、ウケなければ、売れません。
歌川(安藤)広重の忠臣蔵の浮世絵に、ちょこっと仔犬が描かれています。これは計算したな。討ち入りを終えた四十七士が高輪の船着場に、舟を乗りつけました。人殺しをした殺伐とした浪士の心情。幕府直参の高家旗本を殺害し、いつ追手が来るかという緊張感。泉岳寺までもう少し、不穏な雰囲気が漂います。
この絵の側らを見ると、無邪気に戯れる仔犬。まあ昔の犬だから野良が、船着場にいても不思議はないよな、犬だから場の空気を読まないで、じゃれていて当然です。これ抜け感だな。
江戸時代の人は、テレビもスマホもないので、箱の中に入れた浮世絵を、何度も何度も見ます。そういう鑑賞法では、緊張感のある絵に、仔犬でほっこりは、飽きられず鑑賞してもらえます。絵草子屋で、「この犬ころが、いいー。」と子供にねだられることも、広重さん計算したかな?
市民に絵を売っていた、17世紀オランダ絵画でも、台所なんぞに犬が唐突にいる絵があります。浮世絵師と同じことを考えていたのか。
ちょこんと座る2匹の子犬。その視線の先にいるのは討ち入りを果たした赤穂浪士達です。子犬の存在が場の緊張感をやわらげています。原宿の太田記念美術館で開催中の「浮世絵動物園」展に5/28まで展示中。 pic.twitter.com/VQbp6sA8Ip
— 太田記念美術館 (@ukiyoeota) 2017年5月12日
歌川広重「忠臣蔵 敵討引取」
心は、男子小学校6年生の、浮世絵師。
今回の感想です。浮世絵師は、12歳くらいの少年の感性を持っているなと、感じました。私の感想なので、軽く読んで下さい。
今でいうところの小学校高学年、11、12歳の男の子、江戸時代なら小僧さんが、カッコイイと思う絵を描いている浮世絵が、多いな。
さすがに、多色刷り木版画を創り出した、先輩格の鈴木春信さんは、”中の人が少女”ぽいです。遊郭遊びをする男のものだった浮世絵を、少女の物にもした春信さんの感性には、”少女”が住み付いています。
猫の浮世絵その3 火鉢のそば、女性の膝の上で気持ちよさそうに眠ります。5/2より始まる太田記念美術館「浮世絵動物園」後期展で展示。※本日含め5/1(月)まで展示替えのため休館です。 pic.twitter.com/4VoPzO2vWr
— 太田記念美術館 (@ukiyoeota) 2017年4月29日
鈴木春信「風流五色墨 素丸」うたた寝をしている女性を、後ろの二人がイタズラしている絵だそうです。
北斎や広重の心の中には、少年がいるようです。12歳くらいの男の子が、プラモデルやフィギュアやアニメグッズを選ぶように、浮世絵も買われたのでしょうか。12歳といえば、字の読み書きはもう大人並み、自我も目覚めているので、自分の感性で選ぶことができる。が、大人並みの知識・教養はない。思春期前なので、〝中二病”は発症していないです。
下にあげた広重の浮世絵は、手前の亀と風景の遠近の差がありすぎ。少年がイケてると思いそうな浮世絵です。教養のない人でも分る浮世絵ということで、マーケティングしていたのかな?
最近大人気の歌川国芳は、思春期真っ盛りでコジラセた〝中二病”患者のようです。今、国芳が生きていたら、アニメ制作会社の社長をしていそうです。猫とか金魚の可愛い萌アニメを量産しながら、ロボット・アクション・戦争物・オカルトアニメを作っていそうです。そして世界中の少年・少女たちにトラウマを植え付けます。国芳の世界観からは抜け出せない。
吊り下げられた亀は、とらえた動物を放つ、放生(ほうじょう)のための亀。もとは宗教儀式であった放生は江戸市民にも親しまれ、橋の近くで放つための亀などが売られました。今は日常的には見られない亀と人との関りです。太田記念美術館で開催中の「浮世絵動物園」展にて5/28まで展示中。 pic.twitter.com/r1iBEAPSty
— 太田記念美術館 (@ukiyoeota) 2017年5月18日
歌川広重「名所江戸百景 深川万年橋」
屋根の上でのネコたちの喧嘩を止めようとする「猫ずきな小僧」。歌川国芳の「教訓善悪 子僧揃」より。国芳らしい目のつけどころです。原宿の太田記念美術館で開催中の「浮世絵動物園」展にて5/28まで展示中。 pic.twitter.com/2FlgwYoEef
— 太田記念美術館 (@ukiyoeota) 2017年5月9日
江戸時代の少年のリアル、この頃の男の子もイタズラ好き。
帰ってきた浮世絵動物園展 概要
w e b: | サイト内ページ http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/exhibition/ukiyoezoo twitter https://twitter.com/ukiyoeota |
会 期: | 前期2017年4月1日(土)~26日(日)後期5月2日(火)~28日(日) |
会 場: | 太田記念美術館 |
休 館 日 : | 4/3、10、17、24、27~30、5/1、8、15、22 |
開館時間: | 10:30~17:30(入館は閉館の30分前まで) |
入 場 料 : | 一般700円 大学・高校500円 中学生以下無料 |
太田記念美術館アクセス方法
webサイト: | web http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/ twitter https://twitter.com/ukiyoeota |
住 所: | 東京都渋谷区神宮前1-10-10 |
電 話: | ハローダイヤル03-5777-8600 |
アクセス方法 サイト
最寄り駅
JR山手線 | 原宿駅 表参道口より 徒歩5分 |
東京メトロ千代田線・副都心線 | 明治神宮前駅 5番出口より 徒歩3分 |
河鍋暁斎
水野年方
歌川国貞
