鎌倉と京都のお寺から、移築した建物を紹介
鎌倉の東慶寺から、旧仏殿。建長寺の塔頭から移築された、天授院。京都東山の西方寺から門が二つ、三渓園に移築されています。この四つの建物を紹介します。
明治時代の廃仏毀釈や、将軍家・大名家の後援がなくなり、困窮した寺院から、原三渓が救った建物です。
寺院建築は他に、三渓園には廃寺になった京都府木津川市加茂町の日蓮宗、燈明寺の三重塔と本堂が移築されています、こちらについては別のエントリーで書きます。
それにつけても寺院建築は、凛として、風格があって、特に古建築は良いですわ。
公式サイトより、写真多めで行きます。建物の細部が分るようPhotoshop(画像編集ソフト)を頑張って使いました。
鎌倉の寺院から来た建物
三渓園から近い鎌倉から移築されたのは、禅寺の禅宗様の建物です。原三渓は自身の審美眼にかなうものであれば、京都であれ、大阪であれ建物を移築しました。近くの鎌倉からも、趣深い禅宗建築のお堂が移築されました。
建長寺境内の塔頭、心平寺からの移築と推察される、天授院と。尼五山第一位、駆け込み寺と知られる東慶寺から、仏殿が移築されました。
天授院(てんじゅいん)重要文化財
内苑の臨春閣を右に見て月華閣への坂道を上るとあります。
大正5年(1916)に移築されました。桁行四間、梁間三間の大きさの茅葺屋根の簡素な外観。内部は一部屋になっています。
天授院の名は原三渓の、養祖父善三郎の法号で、原家の持仏堂です。原三渓は鎌倉星ヶ井地蔵の本堂で六百年前のものと信じていました。
現在、鎌倉に星ヶ井地蔵がありません。江ノ電長谷駅近くの極楽寺の切通のそばの星ヶ井には、虚空蔵堂がありますが、該当する地蔵堂ありません。
戦後の調査で、建長寺の塔頭で、今は廃寺となった心平寺地蔵堂ではないかと、考えられています。
天授院は建立が慶安四年(1651)江戸時代初期、建長寺の大工が建てたもので、創建当時は、建物の外も中も黒漆が塗られていて、今と違った装いのお堂でした。

三渓園 天授院

三渓園 天授院

三渓園 天授院
旧東慶寺仏殿(きゅうとうけいじぶつでん)重要文化財
東慶寺は鎌倉尼五山の一位で、女性の離婚を取り仕切った駆け込み寺で有名です。山ノ内の北鎌倉駅近くにある禅宗の元尼寺です。
旧東慶寺仏殿は明治40年(1907)に移築されました。東慶寺は明治になり、領地を失い窮乏しました。その後明治時代の終わりに、尼寺から男僧の寺になりました。
旧東慶寺仏殿は、禅宗様式です。主体部は桁行3間、梁間も三間、一重の裳階が付く、三方裳階付。屋根は寄棟の茅葺、裳階は杮葺き、正面の中央に桟唐戸、両脇に略した桟唐戸が入れられている。
内部は、土間形式で、瓦四半敷、天井は格天井
当初は室町時代の建築と思われていました。調査により江戸初期の建築の可能性がでてきました。江戸初期の東慶寺は豊臣秀頼の娘・天秀尼がいたころで、継母の千姫により、東慶寺が大いに復興しました。その頃の建物ではと推察されます。


三渓園 旧東慶寺仏殿

三渓園 旧東慶寺仏殿
京都から来た2つの門
内苑の2つの入り口の門は、京都の西方寺からきました。
御門(ごもん) 横浜市指定有形文化財
内苑の入り口にある立派な門です。
京都東山の西方寺より、大正時代に移築されました。道路拡張工事により、門が処分されそうになり移築されました
御門は薬王門です。屋根は切妻の瓦葺、本柱・控柱ともに角柱、妻に大きな蟇股を入れている、規模が大きい堂々とした門です。

三渓園 御門

三渓園 御門

三渓園 御門
海岸門(かいがんもん)
海岸門は御門と同じく、京都東山の西方寺から、大正時代に移築された門です。内苑のもうひとつの入り口です。
海岸門という名称は、近くにある三渓園の南門が、埋め立て工事前は海に通じる門でしたので、海岸門と呼ばれています。
御門より海岸門は小さいですが、同じ寺の移築なので、趣が似ています。

三渓園 海岸門

三渓園 海岸門

三渓園 海岸門
三渓園の各建物の、紹介
※記事を書きましたら、随時リンクを貼っていきます。
※順路の順番に並べています。
内苑
御門(ごもん) 横浜市指定有形文化財 当ブログ
白雲邸(はくうんてい) 横浜市指定有形文化財
臨春閣(りんしゅんかく) 重要文化財
旧天瑞寺寿塔覆堂・月華殿・亭榭 豊臣秀吉・徳川家康ゆかりの建物
http://koten-kagu.jp/2016/09/15/kamakura-70
旧天瑞寺寿塔覆堂(きゅうてんずいじじゅとうおおいどう)

三渓園 旧天瑞寺寿塔覆堂
月華殿(げっかでん)

三渓園 月華殿
亭榭(ていしゃ)

三渓園 亭榭
金毛窟(きんもうくつ)茶室 重要文化財
天授院(てんじゅいん) 重要文化財 当ブログ
聴秋閣(ちょうしゅうかく) 重要文化財
春草廬(しゅんそうろ)茶室 重要文化財
蓮華院(れんげいん)茶室
海岸門(かいがんもん)当ブログ
三渓記念館
三渓記念館は、内苑の入り口にあります。ミニ美術館とミュジアムショップと、抹茶処があります。立ち寄ることを、おススメします。

三渓園 三渓記念館 望塔亭の抹茶
鶴翔閣(かくしゃうかく)
原三渓の自宅、明治35年(1902)建設。平成12年修復工事。
※毎年8月に公開されます。
2016年8月の公開の様子。室内の写真が見れます。


三渓園 鶴翔閣の玄関
外苑
旧燈明寺三重塔(きゅうとうだいじさんじゅうのとう)重要文化財
松風閣 展望台
林洞庵(りんどうあん)茶室
初音茶屋(はつねじゃや)休憩所
梅林 臥龍梅
寒霞橋
横笛庵(よこぶえあん)茶室
旧東慶寺仏殿(きゅうとうけいじぶつでん)重要文化財 当ブログ
旧矢箙原家住宅(きゅうやのはらけじゅうたく)合掌造り 重要文化財 いつでも見学できます。
旧矢箆原家住宅は、岐阜県大野郡荘川村にありました。昭和32年、ダム工事にともない水没することになり、三渓園に移築されました。
江戸末期に建てられ、一階は飛騨の大工の作った、書院と農家。屋根裏部屋は村人が共同で作った合掌造りです。内部の見学ができます。

三渓園 旧矢箆原家住宅

旧燈台寺本堂(きゅうとうだいじほんどう) 重要文化財
三渓園にはまだまだ素敵なところがあるので、エントリーが増えます。お楽しみに。
三渓園 アクセスデータ
w e b: | http://www.sankeien.or.jp/index.html |
住 所: | 神奈川県横浜市中区本牧三之谷58-1 |
電 話: | 045-957-0634 045-957-0635 |
休 園 日: | 12月29日・30日・31日 |
開館 時間: | 9:00~17:00(入園は閉園の30分前まで) |
駐 車 場: | 乗用車 最初の2時間500円、以降30分毎100円当日最大1,000円 バス 駐車時間に制限なく、1利用につき1,000円 |
入 場 料 : | 大人(中学生以上)500円(400円)小人(小学生)200円(100円) ( )内、20名以上の団体、大人・小人の区別はありません。 学生だけで構成された団体は、学生団体入園料金250円 回数券、年間パスポート、前売券 入園料免除(無料)の規定もあります。詳しくはこちらに。 |
アクセス方法
web交通ページ http://www.sankeien.or.jp/access/index.html
電車・バス
駅名 | バス乗り場 | バスの系統 | 降りるバス停 |
JR京浜東北線 根岸駅 | バス1番乗り場 | 横浜市営58・99・101系統 | 本牧 下車徒歩10分 |
JR 東急 京急 相鉄 市営地下鉄 横浜駅東口 | バス2番乗り場 | 横浜市営8・148系統 | 本牧三渓園前 下車 徒歩5分 |
JR京浜東北線 桜木町駅 | バス2番乗り場 | 横浜市営8・148系統 | 本牧三渓園前 下車 徒歩5分 |
市営地下鉄元町・中華街駅 4番出口 | 山下町バス停 | 横浜市営8・148系統 | 本牧三渓園前 下車 徒歩5分 |

三渓園 旧東慶寺仏殿
10月2日(日)のバロックお茶会に参加します。バロック家具とロココ家具についてレクチャーします。
2016年9月24日初出
2022年2月13日改訂