ウィリアム・モリスと英国の壁紙展 そごう美術館 2019 モリスって天才そして商売上手だと思ってしまいました。

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そごう美術館 ウィリアム・モリス「ピンパーネル(るりはこべ)」モリスと英国壁紙展インテリア関連の展覧会と本
そごう美術館 ウィリアム・モリスと英国壁紙展 「ピンパーネル(るりはこべ)」
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断絶するインテリア

古い家具を使う

1930年代の居間:この時代の居間の多くは、上図のように古いものと新しいものを混ぜていた。たとえばラジオ、サイドボード、肘掛け椅子、暖炉はアール・デコ様式だが、敷物、床板、ピアノは前の時代のおさがりだ。

「英国のインテリア史」トレヴァー・ヨーク著69ページ

何時の時代でも、どこの国でも、懐ぐ合いの良しあしに関わらず、流行の終わったインテリアスタイルの家具を使い続けられています。それが庶民なら人目に付く居間になるところ、貴族ならば、納戸なり老人の部屋に置かれるだけで、使えるのなら壊れるまで使うのが、使い手にとっての家具です。

当然売り手の方は、インテリや様式に合わない家具は、捨てて新しい家具をご購入頂きたいものです。ついでに家も新築してくれると、業界全体が潤います。

今回ウィリアム・モリスの壁紙を観て、思ったことは、前の時代との断絶でした。モリスの壁紙を貼ったら、前の時代の家具は置けない。商業的に凄い破壊力です。とんでもないものを見せられたと思いました。

実際はアール・ヌーボー、アーツ・アンド・クラフツの家は、郊外の新築住宅や、勃興した中産階級の住まいだったので、伝統的インテリアとは別のところで花開いたのでした。

それでも言いたい、この破壊力は凄い。


「英国インテリア史」、カワイイ絵柄で、親しめます、ぜひ手に取ってください。

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ロココの流れを汲む、モリス以前の壁紙

第一章は「ウィリアム・モリス以前」ということで、ロココ調の花の壁紙が展示されていました。この展覧会はイギリスの有名な壁紙会社、サンダーソン社の、アーカイブから出品されていました。何処かの建物に貼られていた壁紙が額装されていました。焼け、破れがあって、実際に壁に貼られたていた生々しいものでした。

ヴィクトリア時代の英国らしく、前時代の流れを継いだロココ。エンパイヤスタイルもあれば、アルハンブラ宮殿調、やっぱりあった日本調と、当時イギリスで好まれた、あるとあらゆるインテリ様式の壁紙があります。モリスと決定的に違うのは、立体的で絵画的です。

壁紙というのは、本当は画家に手描きで壁面を描いて貰いたい、でも無理なんでプリントした壁紙を貼るという、代用品から始まったので、当初は後ろめたい商品だったようです。

横浜で作られ、イギリスの壁を飾った、金唐革紙。

日本とヨーロッパとを、行ったり来たりした不思議な壁紙があります。

バロック時代、オランダの富裕層の住宅の壁は「金唐革」という革に細工し金の装飾を施した大変贅沢な革の壁紙で飾られまし壁に

江戸時代オランダと日本の交易で、オランダは欲しいものが沢山あるのに、日本人は買ってくれない事態がありました。色々オランダ側が売り込んで、そのなかで日本人に喜ばれたのが、金唐革で、オランダ商人は。当時すでに時代遅れとなった金唐革を、あちらこちらのお屋敷の壁から剥がして、日本に輸出しました。日本では袋物などにされ珍重されたのでした。

金唐革は高価なので、何とか作って庶民の手に入るよう考えた人がいました。(平賀源内だったかも?)日本では昭和の世まで代用品は紙で作られました。和紙で代用したのが「金唐革紙」です。

ここまでは私も知っていたのですが、今回の展覧会で驚きの展開がありました(当社比ならなぬ私比ですが)。開国後横浜で、イギリスの会社がこの金唐革紙を作る工場を経営していたことです。一社で6つも工場があったそうです。勿論働いているのは日本人の職工です。日本で小物入れになっていた金唐革紙が再びヨーロッパの壁を飾ることとなったのは、不思議な気がします。

金唐革はイギリス伝統の彫刻した羽目板を多用するお屋敷には、合いそうです、迫力ある金唐革紙の需要はあったのです。ウィリアム・モリスのデザインで横浜で作られた金唐革の展示もありました。重厚な印象です。

ウィリアム・モリスと英国の壁紙展

ウィリアム・モリスと英国の壁紙展

インテリアショップを経営するつもりで、モリスを見ると凄い。

モリスの壁紙を観ながら思ったことは、前の時代の壁紙を、スパッと切り捨てて、新しいものを作り出しているところです。天才です。

イギリス人は中世のゴシックに誇りを持っていて、アーツアンドクラフツ運動は、どんぴしゃな様式でもあった訳なので、受け入れられないものではありませんでした。これは近世以降のルネサンス、バロック、ロココ、シノワなどの伝統から離れています。

モリスの壁紙は、自然からとられた植物小動物、平面的な描写、中世的な雰囲気といい、ロココスタイルの部屋に貼るのは場違いです。モリスの壁紙は、新しい家で新しい家具調度と暮らすためにあると思いました。

モリスの後継のアーツ・アンド・クラフツ運動の担い手たちのデザインした壁紙より、モリスの方が、題材にした動植物が生き生きとして、深みがあって物語を感じる魅力的な壁紙でした。後輩はぱっと見同じに見えるんだけれど、怖ろしく闇が深いです。

ウィリアム・モリスと英国の壁紙展

ウィリアム・モリスと英国の壁紙展

ウィリアム・モリスと英国の壁紙展 概要

サンダーソンアーカイブ ウィリアム・モリスと英国の壁紙展ー美しい生活を求めて

w e b:サイト https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/archives/19/william_morris/
会  期: 2019年4月20日(土)~6月2日(日)
会  場: そごう横浜店5階 そごう美術館
休 館 日 : 無休
開館時間: 10:00~20:00 4/26~5/5 10:00~20:30
(入館は閉館の30分前まで)
入 場 料  :一般1,300円(1,100円)大学・高校800円(600円)
中学生以下無料( )内 20名以上の団体
各種障がい者手帳お持ちの方は、本人と介護者一人まで無料
ミレニアム/クラブオンカード セブンカードプラス セブンカードで( )内の金額に割引
詳細はサイトで
そごう美術館 ウィリアム・モリスと英国壁紙展

そごう美術館 ウィリアム・モリスと英国壁紙展

そごう美術館アクセス方法

webサイト:web https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/
住   所:横浜市西区高島2-18-1 そごう横浜店6階
電   話:045-465-5515  美術館直通

アクセス方法 サイトページ

最寄駅:JR・東急東横線・京浜急行・相鉄線・横浜地下鉄 横浜駅 徒歩3分

神奈川県横浜市西区高島2-18-1
そごう美術館 ウィリアム・モリス「ピンパーネル(るりはこべ)」モリスと英国壁紙展

そごう美術館 ウィリアム・モリスと英国壁紙展 「ピンパーネル(るりはこべ)」

2019年6月3日初出
2021年7月8日改訂
2022年3月30日改訂

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