海を渡ったニッポンの家具 LIXILギャラリー 東京 2018 魂が熱いぞ!明治の家具職人と貿易商。

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箱根細工飾り箪笥インテリア関連の展覧会と本
メインヴィジュアル 箱根細工飾り箪笥(明治時代)http://www.livingculture.lixil/topics/gallery/g-1806/
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日本の家具を輸出すること。

2018年8月、大塚家具は2018年1~6月期の単独最終損益は20億円の赤字だったというニュースが出ました。大型店は入店件数が前年同期比2ケタ減になっているという、想像の上を行くものでした。

大塚家具、揺らぐ国内専業 提携で生き残り模索 日経新聞2018/8/14

大塚家具のニュースについて、私はSNSで一言も語りませんでした。やはりこうなることは予想していたので。失われた10年で大塚家具の顧客だった、中間層の没落と、富裕層向けでも業界の主導権が取れなかったこと(取れたところで、かなりの事業の縮小)ネットの発達で、コアなマニアと、家具メーカーや職人が直接つながり、BtoC取引が可能となりました。大型店舗で総花的に高級家具を扱う、大塚家具のような小売店は、もう不要なのです。

LIXIL ギャラリー(東京)の海を渡ったニッポンの家具展を見て、思いました。大塚家具が家具にこだわってビジネスをするならば、日本の家具を、海外に輸出する道もあったのかな。

夜郎自大に日本のデザインは凄いと思っている人には悪いのですが、戦後、家電や自動車のように、世界を日本の家具が席巻したしたことはありません。内需で栄えてきたのです。

展覧会場を、日本の家具を輸出するんだと、思いながら回っていたら、わくわくしてきました。

輸出に携わる人も、是非見てください。

このブログ・エントリーは業界人以外の、需要は0ですが、明治の職人の熱き魂を感じた展覧会で、心揺さぶられました。

家具の関係者以外では、輸出品の関係者にも見ていただきたいです。明治時代、連絡手段が船便の手紙で、タイムラグがある上に、情報量が少なくても、お客様に愛される家具がかつて作られていました。

何より銀座で無料だよ~ん。銀座通りの警察博物館の隣です。

外連(けれん) 下手物(げてもの)

存在は知っていましたが、嫌いです。

明治時代の輸出家具のことは、今展覧会の協力、小泉和子氏(家具道具室内史学会会長)の著作で知っていました。私個人的には嫌いです。会場を回りながら、欲しくないよなーを、通り過ぎ、生理的にダメでした。

当ブログでもしばしば書いていますが、バロック・ロココ・琳派が大好き、金装飾された寺社建築も大好きなのです。むしろシンプル・モダンに懐疑的です。今回の輸出家具にはこれでもかと装飾が施されているのですが、何かが違う。

幕末から明治の東京の美意識には゛粋”が根強くあります。現代でもなお東京のデザインには、粋でなければ、居場所すらないところがあります。横浜で制作していたこれらの家具は、粋の反対語゛野暮”です。芝山細工なんて、国内では売れないでしょう。内国向け美意識を捨て、欧米人向けに特化したのでしょう。

そんな私でも、明治の職人は凄い!と思わせ、家具の輸出がしたーい!と、わくわく!させた、展覧会でした。


室内と家具の歴史 (中公文庫) 小泉和子著 定価1,234円


小泉和子氏が館長の、昭和の暮らし博物館

昭和の暮らし博物館 大田区 昭和の生活がわかると、平成が見えてくる!?
仕事で趣味で衣食住に関心のある人は、ぜひ見て下さい。 家具道具史の研究家で知られる、小泉和子博士一家が、昭和26年からは平成8年まで住んでいた、ご自宅を保存して公開しているのが、この大田区にある昭和のくらし博物館です。よく昭和の懐かしい家...

プライドを捨て、とつ國の客を想う、明治の職人。

寄木細工・箱根細工の大きなライティング・ビューローが展示されていました。穴が開いたり破損していたりと、長い間愛用されていたんだなと分かる品でした。よく廃棄されずに残されていました。欧米人の体格に合わせたのか、大きいのです。

同じく寄木細工の飾り箪笥も展示されていました。欧米の暮らしに合わせ、変形スタイルにしています。子細に見ていくと輸出先のマーケティングがされていました。こういう家具が、豪華に装飾された当時のヨーロッパの住宅であっても、フォーカルポイントとして、さぞ目立ったでしょう。持ち主の自慢の品にだったことでしょうか。

情報量も多くなかった時代に、お客様の心を鷲掴みにするため、職人が苦心していたのがわかります。

インスタで見た家具を、コピーしても、そこには心が入らないって。

寄木細工 ライティング・ビューロー

寄木細工 ライティング・ビューローhttp://www.livingculture.lixil/topics/gallery/g-1806/

豪華絢爛な彫刻の横浜家具は、仕事がなくなった仏像仏具の職人が転身したそうです。まがまがしさは、その辺りから来ているのか?プライドを捨てた職人たちの、魂をがっつり感じました。異国の客に気に入ってもらえるよう、魂を込めた家具でした。

職人および、この貿易事業の周辺の人たちの、ただならぬ熱量に圧倒されました。

輸出用の家具なので、日本国内に作例が残ってなくて、コレクターの金子皓彦氏(日本輸出工芸研究会会長)が、海外で入手したコレクションが展示されていました。仙台箪笥は製品不良のためたったひと棹、残された箪笥です。日本人が見たことがない、日本製の家具というのも、特異性を感じます。

外連・下手物といった代物でしょうが、誰に何を言われようが、作った職人と、売り込んだ貿易商が、ここにいました。少年漫画みたいだ、魂が熱い。

鏡付き仙台箪笥

鏡付き仙台箪笥 http://www.livingculture.lixil/topics/gallery/g-1806/

鏡の位置が高いのは、ランプの明かりを反射させて室内を明るくするためと、考えられるそうです。西洋事情を正確に得ていたのでしょう。マーケティングが凄い!

流石に飾り金具が豪華で、本展覧会で唯一、現代の日本人にも通じる美的感覚の箪笥でした。

海を渡ったニッポンの家具展 看板

海を渡ったニッポンの家具展 看板

海を渡ったニッポンの家具展 概要

海を渡ったニッポンの家具ー豪華絢爛仰天手仕事ー

w e b:http://www.livingculture.lixil/topics/gallery/g-1806/
会  期:2017年9月6日(木)~11月24日(土)
会  場:LIXIL ギャラリー
休 館 日 :水曜日
開館時間:10:00~18:00
入 場 料  :無料

巡回展 LIXIL ギャラリー大阪 2018年6月8日(金)~8月21日(火)


この展覧会は、「海を渡ったニッポンの家具-豪華絢爛仰天手仕事-」の出版に合わせて行われました。 LIXILサイトの紹介ページ

海を渡ったニッポンの家具 豪華絢爛仰天手仕事 (LIXIL BOOKLET) 単行本(ソフトカバー) –
菅靖子 (著), 門田園子 (著), 庄子晃子 (著), 大西成明 (写真)  定価1,944円

LIXIL ギャラリー アクセス方法

webサイト:http://www1.lixil.co.jp/gallery/
住   所:東京都中央区京橋 3-6-18  東京建物京橋ビル  LIXIL:GINZA 2F
電   話:03-5250-6530

アクセス方法 http://www1.lixil.co.jp/culture/map/detail02.html

 地下鉄東京メトロ銀座線京橋駅徒歩1分
東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅徒歩3分
都営地下鉄浅草線宝町駅徒歩3分
 JR線山手線 京浜東北線有楽町駅徒歩7分
東京都中央区京橋 3-6-18 東京建物京橋ビル
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2018年9月21日初出
2022年3月24日改訂
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