近頃話題の足利氏と夢想疎石の寺
瑞泉寺といえば、花の寺として知られています。春には梅、名物の黄梅、春は枝垂れ桜、夏は芙蓉、桔梗、百日紅、秋は紅葉、冬は水仙の咲く寺です。
2017年のヒットといえば、「応仁の乱」と「観応の擾乱」のベストセラーで。室町時代に注目が集まっています。この秋には、京都足利将軍義教VS鎌倉公方足利持氏の対立に始まり、関東地方を13年も早く戦国時代にした、「享徳の乱」の本が出ます。今まで日の当たらなかった時代なので、室町ブームが盛り上がりそうです。
室町時代の鎌倉に目を向けると、瑞泉寺は重要な寺です。足利尊氏の息子で初代鎌倉公方の基氏が、夢想疎石に帰依し、鎌倉公方の菩提寺にしました。基氏、滿氏、持氏ら鎌倉公方歴代の墓があります。

瑞泉寺 本堂に向かう石段
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見どころ
本堂と客殿
瑞泉寺は由緒のある寺ですが、古い建物はありません。本殿は円覚寺の国宝舎利殿のデザインを取り入れています。宝珠が中央についた欄間や、花頭窓の稜線が斜線でなく垂直に落ちている所など、鎌倉らしさが出ています。
本堂には徳川光圀が寄進した木造千手観音像、釈迦牟尼像、夢想疎石像が祀られています。
本堂右手にある趣ある古建築は、客殿です。江戸時代延宝年間の建築で、昭和に横浜市磯子区にの金蔵院より移築されました。鎌倉地方の特徴のある古建築です。残念なことに非公開です。

瑞泉寺本堂と花の庭園

瑞泉寺 本堂

瑞泉寺 本堂より客殿を見る
茶室と本堂前の庭
茶室は保寿庵といいます。非公開です。お庭に茶室は映えます。本堂前の庭園には水戸黄門こと徳川光圀が植えた冬桜や、市の天然記念物の黄梅など、四季楽しませる花々が植えられています。

瑞泉寺 茶室保寿庵

瑞泉寺 桔梗
どこも苦地蔵
本堂から 瑞泉寺庭園へ行く途中にある、お堂にお地蔵さまが祀られています。このお地蔵さまは「どこも苦地蔵」と呼ばれています。昔この地蔵さまをお守りしていた僧が、貧しくてよその土地に移ろうとしたところ、地蔵が「どこも、どこも」話したと言い伝えがあります。

瑞泉寺 どこも苦地蔵
ゆかりの文人・有名人
瑞泉寺は五山文学の発祥に地になります。徧界一覧亭に集まった禅僧の交流から文学が生まれました。
江戸末期、吉田松陰が、母方の伯父にあたる第二十五世住職の竹院和尚に会いに、寛永六年(1853年)の六月に訪問しました。その後も何度か訪問したのでした。
境内に近現代の文学者とのゆかりもあり、山崎方代歌碑、吉野秀雄歌碑、久保田万太郎句碑、大宅壮一評論碑があります。

瑞泉寺 吉田松陰先生留跡碑
名勝瑞泉寺庭園
この庭を見て、違和感を感じました。何処をどういう風に見るのか皆目見当がつかなかったからです。この庭を作って夢想疎石は瑞泉寺の後で、京都の天龍寺、西芳寺など住持した寺々で作庭しています。天龍寺の庭園は池泉回遊式庭園で借景式庭園という、今に続く日本庭園の元になった庭を作りました。夢想疎石は庭園の転換点にいた人でした。
瑞泉寺のこの庭と、天龍寺などの池など眺める庭と、形が違うな、庭に入り込めない感じがしました。調べてみたら、大きな天女洞で座禅をして、境内を眺める庭でした。水月感という修業をする場でした。瑞泉寺のサイトには天女洞からの写真があります。
向かって左、池にかかる橋をわたり、人一人通れる幅しかない石段をたどっていくと、山頂に徧界一覧亭があります。こちらは非公開です。ここからは鎌倉の町、相模湾に晴れた日には伊豆諸島、富士山が見えるそうです。
瑞泉寺の庭園は、この位置以外公開していないので、ベストの場所から庭を望むことが出来ません。夢想疎石の意図した位置から庭を眺めることが出来ないのは残念です。

瑞泉寺 庭園 天女洞

瑞泉寺 庭園

瑞泉寺 庭園 徧界一覧亭へつづく石段
瑞泉寺は、鎌倉で紅葉が遅れて見れる名所です。12月10日過ぎからだそうです。

瑞泉寺とは
宗派 臨済宗円覚寺派
山号寺号 錦屏山瑞泉寺(きんぴょうざん ずいせんじ)
創建 嘉暦二年(1327)
開山 夢想疎石
本尊 釈迦牟尼仏
鎌倉三十三観音霊場 第八番札所 千手観音菩薩
錦屏山瑞泉寺は、夢想疎石がここを禅寺相応の勝地として選び嘉暦二年(1327)に建立した寺(略)
初代関東管領として鎌倉入りした足利基氏は夢想疎石に帰依し。瑞泉寺は基氏以後、鎌倉公方代々の菩提寺となった。塔頭も十を超え、関東十刹第一位の格式を誇った。
後醍醐天皇や足利尊氏に帰依された夢想疎石は瑞泉寺の作庭にも力を注いだ。岩盤をを削り出した、岩盤とも称すべき庭は、本堂裏に発掘復元されている。この庭は書院庭園の起源となった。夢想疎石は後に京都の西芳寺・天龍寺の庭園も手掛けた。
鎌倉の寺 小事典
アクセスデータ
注意:鎌倉宮から坂道を上がり、境内の入場券売り場から、長い石段を上がります。足腰が弱い人は注意してください。
webサイト: | http://www.kamakura-zuisenji.or.jp/ |
住 所: | 神奈川県鎌倉市二階堂710 |
電 話: | 0467-22-1191 |
入場時間 : | 9:00-17:00 入場は16:30まで |
拝 観 料: | 大人200円 小中学生100円 障害者無料 |
駐 車 場: | 無料10台 |
た ば こ: | 全域禁煙 |
そ の 他: | 段差なし(スロープ有) 英文パンフレットの用意あり |
御朱印受付: | 有り(帳面持参のこと。志納。) |
アクセス方法
最寄駅:JR横須賀線線鎌倉駅・江ノ島電鉄鎌倉駅 東口
バ ス:京急バス 鎌倉駅⇔大塔宮行き 終点大塔の宮下車 徒歩10分
近くの名所
荏原天神
来迎寺(西御門)
鎌倉宮
覚園寺
瑞泉寺
永福寺跡

白旗神社 (西御門)

2017年8月23日初出
2018年12月12日改定