シェアしていただけると、嬉しいです。

アンチンボルト展 国立西洋美術館 2017 皇帝のお気に入り画家は、真面目に笑いを捕りに行きます。

アンチンボルト展
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2017arcimboldo.html

はじめの一枚「四季」でその精巧さに驚く!

自然主義精密描写の、アンチンボルト。

展覧会場の自動ドアが開くと、アンチンボルトの油絵「四季」が一枚だけ展示されていました。この一枚で鷲づかみされました。醜い爺さんの顔なのに、林檎・葡萄・さくらんぼ木の枝や、ピアスになっている麦の穂、服が鮮やかな花々…これらに見入ってしまいました。描写が細かく、色も鮮やか。初めの一枚から見入ってしまいました。

私はアンチンボルトのことを澁澤龍彦さん経由で知りました。シュールレアリストが注目し、1980年代に美術史で確立したマニエリスム時代の、画家ということで興味を持った画家です。ただ美術館で申し訳程度に1~2枚展示されて、そんな扱い画家なのかなと思いました。寄せ絵や上下逆さま絵と笑える絵しか見たことがなかったので、私の中ではマイナーな一発芸人的な画家でした。

今回アンチンボルト展を観て、宮廷画家として手腕を発揮していて、油絵も相当な腕前の実力がある画家でした。一発屋芸人どころか、第一線で活躍した名人でございました。

アンチンボルトの油絵は精緻で色彩が豊かでした。

デッサンが何点が来ていました。ダ・ヴィンチ譲りの、自然主義描写で、ミラノに帰った直後の「紙の自画像」は巻き癖のついた紙で自身の胸像の絵なのですが。細密かつ真面目な絵でした。

アンチンボルトの寄せ絵・上下絵は、実物が色鮮やかな油絵でした。「四季」と「四大元素」は会場の4方の壁に、「春」「大気」、「夏」「火」、「秋」「大地」、「冬」「木」と対応する絵ごとに飾られていて、「おーこれは!なんか理解できそう。」と思ってしましました演出もドラマティックです。知識では知っていましたが、こう並べられると深い意味が感じられました。ただのおふざけ絵ではない!

宮廷画家として王様から愛されたのは、アンチンボルトが、宮廷の人々を喜ばせる、機智に富んだ人だからでした。「法律家」という絵は、顔が食用の鳥と魚、白いシャツの襟に見えるのが書類。この絵は法学知識を持った行政官、ジョン・カルヴァンの風刺肖像画ということが20世紀なってわかりました。緊縮財政をするので宮廷のみんなに嫌われていたそうです。

花の青年像「春」は約80種の植物、魚で描かれた「水」は60種以上の魚類で描かれています。当時の博物学研究の成果を反映したものだそうです。笑いを取っているだけかと、思いきや、真面目なのです。そのあたりも魅力かな。

アンチンボルト展 「四季」

アンチンボルト展 http://arcimboldo2017.jp/works/

アンチンボルトのプロフィールを調べてみました。

ダ・ヴィンチの街、ミラノ生まれ。

ジョゼッペ・アンチンボルトは1526年にイタリア・ミラノに生まれました。父のピアージョ・アンチンボルトも画家でミラノ大聖堂の造営局で働いており、1549年に同局に採用されました。当時のミラノの美術界は、1516年にミラノを去った、レオナル・ド・ダヴィンチの影響にありました。アンチンボルトの周辺は、ダ・ヴィンチのスッケチが残されていたり、影響を受けた画家がいました。ミラノ・ルネッサンスを代表する画家ベルナルディーノ・ルイーニの父ビアージョ・アンチンボルトの素描が展示されています。

アンチンボルトは、ダ・ヴィンチの自然主義的要素と、カリカチュアの要素を受け継ぎました。後に、最新の博物学の成果を取り込んだ「四季」などの寄せ絵が描かれました。

アンチンボルト展、レオナル・ド・ダヴィンチの手稿

アンチンボルト展、レオナル・ド・ダヴィンチの手稿http://arcimboldo2017.jp/works/

宮廷画家へ

1562年、ミラノ大聖堂でステンドグラスのデザインをしていた、アンチンボルトはハクスブルグのマクシミリアン2世の要請により、ウィーンで宮廷画家になりました。アンチンボルトのミラノ時代や、この辺りの事情が分かる文書が発見されてないので、よくわからないのです。

宮廷画家になると、肖像画を描くことと、先輩の書いた肖像画のコピーを、何枚も描かねばならなくなります。20世紀にアンチンボルトが再発見されると、肖像画の真筆探しがはじまりました。今回アンチンボルトに帰属する肖像画も展示されていました。人の描いた絵のコピーを量産するのは正直しんどい仕事だと思います。かなりの腕があったから出来た仕事でもあります。

宮廷画家になった翌年「四季」の初めのヴァージョンを描きあげ、マクシミリアン2世に献上しました。ミラノ時代に構想していのか知れませんが、博物学的な精密画を1年で描き上げるとは凄いなー。一枚だけならともかく、このシリーズはいくつものヴァージョンがあります。各地の王室にプレゼントなのでしょうが、今回の展覧会には、ヴァージョン違いが展示されていました。ヴァージョンによっで手を抜くこともしていないです。(多分なんですが、弟子を使ってないようです。私見ですけど。)

アンチンボルトは、馬上試合の装飾や、美術品の買い入れの仕事もしていました。何度かミラノへの帰還を願い出ましたけれど叶わず。4人の王に仕えました。この中には、引きこもり・オタク・錬金術マニアのルドルフ2世もいました。

アンチンボルト展 寄せ絵

アンチンボルト展 寄せ絵http://arcimboldo2017.jp/works/

ミラノ帰還、静物画誕生に、一枚かんでました。

1587年61歳になったアンチンボルトは、ミラノに帰りました。最晩年までハプスブルク家の王様のために仕事をしました。花の寄せ絵で女性像を描いた「フローラ」。ルドルフ2世が花と野菜で描かれた「ヴェルトゥムヌスとしての皇帝」をウィーンに送りました。

博物学に基ずいた、精巧な描写は静物画の地平を開きました。宗教画や人物画の脇役だった花や果物が独立して、静物画が誕生します。アンチンボルトの上下絵は面白絵画として描かれていますが、野菜を盛った鉢の静物画とも捉えられます。

アンチンボルトの戻ったミラノは静物画が生まれた時期でもありました。今回の展示品に、世界初の静物画が展示されていました。ジョバンニ・アンブロージョ・フィジーノ「金属の皿に載ったモモとブドウの葉」です。アンチンボルトは、はたちの若き女流画家のフェーデ・ガリーツィアの絵を、何枚かウィーンの皇帝陛下に送り、喜ばれたそうです。そのなかに静物画もあったのではと研究者は類推しています。

静物画誕生にアンチンボルトが一枚かんででいたとは、面白いですね。さらに今回の展覧会主催者は、バロック時代の扉を開いた、カラヴァッジョに影響を与えたとも語っています。自然物を精密に写し取ることできたカラヴァッジョは、ローマの画壇で重宝がられ出世の糸口になったそうな。

カラヴァッジョ展 国立西洋美術館 2016年。大潮流を作った、ならず者。
女占い師 カラヴァッジョ 国立西洋美術館のサイトより 2016年3月27日、染井吉野が咲ききらない上野公園で、花見をする酔狂人たちを横...

好事家の皆様へ、驚異の部屋関連の展示もあります。

アンチンボルトがしていた、宮廷画家の仕事を理解するために、当時の王室・貴族が夢中になった。コレクションの一部が展示されていました。

ヴィンダーカーマーの好きな人、渋澤龍彦ファン、モンスターマニア、エロ…好事家の皆様へ、声を大きくして伝えたい。必見でございます。

ハプスブルク家関係では、お馴染みの玉や貝殻に、金細工の飾りを付けた鉢。水晶に金枠を付けた平皿など、豪華で手間のかかった品々。
生物から直接型どりされた、現物鋳造。
多毛症の、ゴンザレス家を描いた肖像画、息子のエンリコ・ゴンザレスの肖像画。
オックスフォード・アンシュモリアン美術館より 男根による頭部

ネットには情報・画像ともにありませんので、アンチンボルト展に駆け付けて頂きたい!

追従者がしょぼい件。

アンチンボルトは、宮廷画家で、貴族に列せられ、年金の支給もされた優秀な宮廷画家でした。油絵の「四季」や「四大元素」はいくつものバージョンがあり、今回展覧会で拝見して、どのバージョンも細密描写で、手を抜かない仕事ぶりでした。これから古文書が出て来て研究が進むと、アンチンボルトの仕事ぶりがもっと分かるのでしょう。楽しみです。

会場には、周辺の参考作品も展示されていました。寄せ絵のアイデアは誰でも考えうるアイデアなので、アンチンボルトの発案ではありませんでした。歌川国芳の人間が集まって顔になる浮世絵は、アンチンボルトの影響とは言い切れないそうです。

アンチンボルトより先行する、寄せ絵は、面白い絵がありました。でも後輩で、明らかに「四季」のアイデアをパックって描いている、作品が下手です。果物の描写が平面的でおおざっぱ!アンチンボルト先生の実力が、その辺の画家より凄かったことがよくわかりました。(主催者がこれしか、持って来れなかったのかも知れませんが。)

20世紀にシュールレアリストが、アンチンボルトを発見するまで無名だったのには、真似する人が下手すぎて、忘れられてしまったことにも関係していそうです。

北方ルネッサンスの展覧会が大挙して来ます。

ベルーギー・オランダあたりの北方ルネッサンスが大好きでございます。近代の画家クノップフなどベルギーの近代の画家も好きです。今年はハプスブルク家のお抱えの画家で、人間の顔を花・果物・本などで描いた面白絵画で有名なアンチンボルトが、個展とパトロンのルドルフ2世コレクション展両方で見られます。来年にはブリューゲル一族が同じ都美術に来ます。スケジュールを簡単に記しておきます。

アンチンボルト展 2017年6月20日(火)~9月24日(日)国立西洋美術館
ベルギー奇想の系譜 2017年7月15日(土)~9月24日(日)Bunkamuraザ・ミュジアム
ルドルフ2世の驚異の世界展 2018年1月6日(土)~3月11日(日)Bunkamuraザ・ミュジアム
ブリューゲル展画家一族150年の系譜 2018年1月23日(火)~4月1日(日)東京都美術館
バベルの塔展、大盛況のうちに終了、大阪の国立国際美術館へ。

バベルの塔展 東京都美術館2017 ボスとブリューゲルの名画を「ボスモン」が盛り上げていました。
ブリューゲルの「バベルの塔」は、美しい絵でした。 東京都美術館のバベルの塔展に行ってきました。2階ワンフローアーを、ピーテル・ブリ...

アンチンボルト展 概要

w e b: 特別サイト http://arcimboldo2017.jp/ 終了
東京都美術館サイト内 アンチンボルト展
twitter https://twitter.com/acbd2017
会  期:  2017年6月20日(火)~9月24日(日)
会  場:  国立西洋美術館
休 館 日 : 月曜日 7/18(火)は休館日
7/17(月)8/14(月)9/18(月)は開館
開館時間:  9:30~17:30 毎週金・土曜日は20:00まで(入館は閉館の30分前まで)
入 場 料  : 一般1,600円(1,400円)大学生1,200円(1,000円)高校生800円(600円)中学生以下無料( )内、前売り・20名以上の団体、
心身に障がいのある方とその付き添い者1名は無料(入館の際に障がい 者手帳をご提示ください)詳細はサイトで、

国立西洋美術館 アクセス方法

webサイト: web http://www.nmwa.go.jp/jp/index.html
facebook
https://www.facebook.com/NationalMuseumofWesternArt/
住   所: 東京都台東区上野公園7-7
電   話:  ハローダイヤル 03-5777-8600

アクセス方法 http://www.nmwa.go.jp/jp/visit/map.html

電車
JR線 上野駅公園出口 徒歩1分
京成電鉄 京成上野駅 徒歩7分
東京メトロ銀座線、日比谷線 上野駅 徒歩8分

東京都台東区上野公園7-7

投稿者プロフィール

山本
平安・鎌倉・室町時代の有職故実デザインの家具・インテリアを、売りたい!と業界ををリサーチしたら、どこも作っていませんでした。絵なんて30年描いていませんが、もう私がデザインするしかない。
雅で品格ある、有職故実のインテリアを世に出すのが、目標。

なお、古いものなら、ヨーロッパのものも大好き、美術・ファションも好きです。十代のころは歴女、二十代は、古典文学と耽美主義と能楽ファンだったので、そちら方面のエントリーも書いてます。

Twitter 江戸唐草

Facebook 山本公子名義
ほぼ家具のこと。

Instaglam 山本公子
スポンサーリンク
スポンサーリンク

シェアしていただけると、嬉しいです。

フォローで応援、お願いします!

トップへ戻る