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クラーナハ五〇〇年後の誘惑 国立西洋美術館2016 聖とエロティックは矛盾しない!?

ルカス・クラーナハ「ホロフェルノスの首を持つユデデット」ウィーン美術史美術館 部分http://www.tbs.co.jp/vienna2016/

ルターの友人にして市長、そしてエロ絵師!

「クラナ-ハ」「クラナッハ」と表記されますが、今回は「クラーナハ」だそうです。名前も「ルーカス」ではなく「ルカス」でよりドイツ語読みに近いのかしら。

ルカス・クラーナハ(父)は今から500年前、日本では戦国時代が始まったころ活躍した。デューラーと共にドイツルネッサンスの画家です。

クラーナハといえば、宗教改革を起こしたルターの盟友。そして、サロメやヴィーナスなど、エロティック絵画やヌード絵画を多数描きました。矛盾な画家ですねー。

クラーナハの生涯、エロとプロテスタントが同時進行!!

1472年10月4日にドイツ中南部のクロナーハに生まれました。本名はルカス・マラー、クラーナハは出身地から。画家である父ハンス・マラーに師事したと思われます。29歳まで消息は不明です。29歳ウィーンで活動を開始、頭角を現します。

1505年33歳、ザクセン選帝公フルードリッヒ3世賢明公の宮廷画家として、ヴィッテンベルグに移住、工房を開設しました。

1517年45歳、ヴィッテンベルグ大学の学長、ルターが「95箇条の論題」を提出、宗教改革がはじまりました。以降クラーナハはルターに支持者として、挿絵の提供、ルターの肖像画の制作。ルターの息子の代父なども務める緊密な関係でした。

このころより「ヴィーナス」「パリスの審判」「ルクレティア」などエロティックな絵画が増える。

1525年53歳裸体画の制作が増加。1537年65歳、ヴィッテンベルグ市長に就任、1544まで断続しながら勤め。1553年81歳でヴァイマールで亡くなりました。

ルカス・クラーナハ(父) 「マルティン・ルターの肖像」

ルカス・クラーナハ(父)
「マルティン・ルターの肖像」
1525年、油彩/板、ブリストル市立美術館
ⓒBristol Museums, http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2016cranach.htmlGalleries & Archives

貴重な板絵が多数来日!日本初の大回顧展。

ルカス・クラーナハは美術好きでしたら、メジャーに知られている画家です。今回は日本初のクラーナハの大回顧展になります。世界10か国以上の美術館・個人所有のクラーナハの絵が、上野の国立西洋美術に集結しました。

ヴェネツィアでキャンパスの上に油絵を描く技術が開発される前の画家ですから、クラーナハの絵は、今では貴重な板絵です。この板絵を日本に輸送して展示しているので、大変贅沢な展覧会でもあります。

わたくしが拝見したのは10月22日で、土曜日でした。国立西洋美術館の世界遺産登録の後の企画展ですから、さぞ混んでいるかと思いいったのですが、意外にも空いていました。
春のカラヴァッジョ展のこともあるので、これから混むと思います。

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岸田劉生、パブロ・ピカソ、森村泰昌他、クラーナハに影響を受けた近現代のアーティストの作品も各コーナーに展示されていました。これは展示しない方がよかったと思います。

ルカス・クラーナハ(父) 「不釣合いなカップル」

ルカス・クラーナハ(父)
「不釣合いなカップル」
1530-1540年頃、油彩/板(ブナ材)、ウィーン美術史美術館
ⓒKHM-Museumsverband.http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2016cranach.html

宗教画・肖像画は人物が個性的に描かれています。

聖とエロティックが混在した、ルカス・クラーナハの矛盾について、今回展覧会に行くときは、あまり考えていませんでした。クラーナハの絵は魅力的なので拝見しにいったのですが、聖とエロティックは、矛盾しなかったことを、わたくし的に発見しました。

会場に行って一枚めは、お仕えしたザクセン選帝公フルードリッヒ3世賢明公の肖像画、続いて、マリアとキリストの聖母子像が3枚展示されていました。

顔の造作が個性的です。肖像画にも言えるのですが個性的です!描かれている人の特徴をよく捉えています。豪華な服飾の表現もよろしいです。

赤ん坊をよく描いているのも今回の発見でした、聖母子像はもとより、天使やアモル(キューピッド)。最後の展示の「メランコリー」の赤ん坊と、結構目に付きました。赤ん坊を描くのが好きな人だったかも?

こちらの聖ヒロエニムスとライオンも、いい感じ。

聖ヒロエニムスさんが多く展示されていました、ただ今大阪の国立国際美術館に巡回。

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エロティックな絵は?

「アロム、行きまーす!」ならぬ、「ルカス、エロ行きまーす!」ぐらいエンジン切り替えて制作した気がしました。エロティックな一連の絵画群とその他の絵を比べてみた感想。

例えば、俳優が反社会的な人物や変質者の役をやるときに、心で割り切って、役に憑依されて演じる。俳優自身の人格の延長線上ではない人格になって、演技することに近い感覚かと思います。

気張って描いたにせよ、クラーナハはこういう絵を描くことは好きっだったと思います。好きだから色々工夫して、現代も多くの人を魅了しています。カトリック陣営の王族から多数注文が来ていること、工房を経営しているので、売れ筋の商品は経営に不可欠など。描く理由はありました。

ルターの盟友がエロ絵は矛盾と思い込んできました。整理してみると、クラーナハは俗人だし、王たちが注文しているので、エロ絵を描いて迫害の危険性もなかったわけです。

先に取り上げた、宗教画・肖像画の女性の顔がナチュラルで個性的でした。「ヴィーナスとアモル」「パリスの審判」の三美神、「ヘラクレスとオンファレ」「ルクレティア」「ユディト」……エロティックな題材の女性は、顔が画一的です。

半開きの目、ややふっくらとした輪郭、男好きする顔です。ファムファタルというか。映画・ドラマの水商売の女、娼婦のステレオタイプそのものです。女性を個性ある人間と見ないです。その辺で、「これは現実女性ではない、特別な悪女だ!」という記号化もしていたのかしら。

女性蔑視、男尊女卑にも見える、クラーナハの絵画ですが、エロ表現は真の自由を求めることになり、女性解放につながりました。旧勢力の古い体質を、エロティック絵画で数百年かけて「改革」してしまいました。おープロテスタント!

ルカス・クラーナハ「ヴィーナス」シュテーデル美術館

ルカス・クラーナハ「ヴィーナス」シュテーデル美術館http://www.tbs.co.jp/vienna2016/work/work4.html

ルカス・クラーナハ「正義の寓意」

ルカス・クラーナハ「正義の寓意」http://www.tbs.co.jp/vienna2016/work/work4.html

「アダムとイブ」は宗教画なので、ヌードでもイブはこの顔に描かれていないのを、別に発見しました。

わたくしの気になった絵

やはり展覧会のキーヴィジュアルになった、「ホロフェルネスの首を持つユディト」ウィーン美術史美術館がいいですね。同じ題材で違うバージョンもありますが帽子をかぶり、刀を真直ぐ上に向け、冷たい眼差しのウィーン美術史美術館が一番構図的にも好きです。クラーナハの代表作でしょう。

「ヘラクレスとオンファレ」は女装を数人の女性に強制される、ヘラクレスの絵が面白かったです。髭ずらのヘラクレスが、女性陣にいたぶられています。困惑ぎみなヘルメスさん。

「子供たちを祝福するキリスト」はカトリック絵画では見たことがないので、現生利益を認めたプロテスタント特有なのかしら。母たちに子供を祝福するするように、頼まれてたキリストが、たくさんの赤ちゃんとお母さんに囲まれています。新しく台湾の台南にできた奇美博物館から来ました。

この絵がアジアにあって良かったと、思わせた仏教にも通じる作品でした。こんな表情のキリストははじめて観ました。

ルカス・クラーナハ「子供たちを祝福するキリスト」

ルカス・クラーナハ「子供たちを祝福するキリスト」http://www.tbs.co.jp/vienna2016/work/work6.html

展示の最後の「メランコリー」もお気に入りです。デューラーに版画が有名です、これに触発された作品でしょう、明るい印象です。画像を手にいれたい、やっぱり図録を買おうか!

図録の代わりにこの本買いました。

今回は図録を買うか悩みました。この日の夕方山種美術館のブロガー内覧会へ行きましたので、厚くて重い図録はどうかなと思いました。ミュージアムショップで、「ルカス・クラーナハ流行服を纏った聖女たちの誘惑」伊藤直子を代わりに買いました。

クラーナハとその工房は、同じ題材の絵を何枚も制作しています。同じ題材でバージョンが異なる絵が何枚も存在します。「パリスの審判」「ヘルメス」…などなど題材別と服飾について書かれています。なかなか興味深く読めました。

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クラーナハ 五〇〇年後の誘惑展 概要

w e b: 特別サイト http://www.tbs.co.jp/vienna2016/
展覧会ページ http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2016cranach.html
twitter https://twitter.com/tbs_vienna2016
facebook https://www.facebook.com/vienna2016
会  期:  2016年10月15日(土)~2017年1月15日(日)
会  場:  国立西洋美術館
休 館 日 :  月曜日(ただし、1月2日(月)は開館)、12月28日(水) 〜 1月1日(日)
開館時間:  9:30~17:30 毎週金曜日は20:00まで(入館は閉館の30分前まで)
入 場 料  : 一般1,600円(1,400円)大学生1,200円(1,00円)
高校生800円(600円)中学生以下無料( )内、前売り・20名以上の団体、
各種障がい者手帳をお持ちの方とその付き添人1名まで無料、
詳細はサイトで、http://www.tbs.co.jp/vienna2016/ticket/

巡回展 国立国際美術館 2017年1月28日(土)~4月16日(日)

国立西洋美術館アクセス方法

webサイト: web http://www.nmwa.go.jp/jp/index.html
facebook https://www.facebook.com/NationalMuseumofWesternArt/
住   所: 東京都台東区上野公園7-7
電   話:  ハローダイヤル 03-5777-8600

アクセス方法 http://www.nmwa.go.jp/jp/visit/map.html

電車
JR線 上野駅公園出口 徒歩1分
京成電鉄 京成上野駅 徒歩7分
東京メトロ銀座線、日比谷線 上野駅 徒歩8分

東京都台東区上野公園7-7
国立西洋美術館 クラーナハ展看板

国立西洋美術館 クラーナハ展看板

投稿者プロフィール

山本
平安・鎌倉・室町時代の有職故実デザインの家具・インテリアを、売りたい!と業界ををリサーチしたら、どこも作っていませんでした。絵なんて30年描いていませんが、もう私がデザインするしかない。
雅で品格ある、有職故実のインテリアを世に出すのが、目標。

なお、古いものなら、ヨーロッパのものも大好き、美術・ファションも好きです。十代のころは歴女、二十代は、古典文学と耽美主義と能楽ファンだったので、そちら方面のエントリーも書いてます。

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ほぼ家具のこと。

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