余計なところはバッサバッサ切って、説明します。
10月2日に参加しました、バロックお茶会で、レクチャした。バロック・ロココ家具のレクチャーを増補したものを数回わたり、ブログに掲載します。

鎌倉市限定で猫脚家具の買い方と、招き猫が語る鎌倉の猫脚

イギリスの家具は、今回取り扱いません
イギリスとヨーロッパ大陸とは、動きが違う
私は家具の歴史の授業を、アンティーク愛好家の鑑定をするための家具史と、家具学校の授業と2回受けました。前者の授業はアンティーク家具修理家さんや、有名なアンティークデーラーさんが講師で少人数の講義でした。ヨーロッパ各国を横断しての家具の歴史でしたので、複雑でわからなくなりました。
家具の歴史は複雑、バロック・ロココ時代は特に複雑です。人に教えるのには難しい、そうだ、イギリスの家具の歴史は取り上げないことにしました。
イギリスの家具様式は、フランスなどヨーロッパ大陸で、ルネサンス・バロック・ロココ様式のころ、ジャコビアン・王政復古・アン女王・ジョージアン様式(別の呼び方もある)と区分も名称も違います。
ロココ様式と同時代に、イギリスではチッペンデール ヘップルホワイトという優美な家具をつくる家具デザイナーがでました。大陸のロココからの影響は受けているのですが、独自の家具デザインなので、今回は取り扱わないことにします。
イギリスのインテリアの歴史なら、この本がおすすめ、イギリスもインテリアも興味がなくても面白い本です、薄い本ですが情報量は多いです。

家具だけ見ていると、イギリスのEU離脱が理解できる。
イギリスは、今でも家具インテリアは大陸と一線を画しています。毎年春にイタリア・ミラノで、インテリアの巨大見本市ミラノサローネが開かれます。数年前聞いた話では、イギリスから、サローネに参加している企業が少ないそうです。異質なんでしょう。
今回の、イギリスのEU離脱は、家具を追いかけてきた私からみると、至極当然。移民問題はただの引き金にしかなかったです。グローバル化だ欧州はひとつだといっても、英国民にはそれに違和感があったと思います。
早わかり バロック家具とロココ家具
特徴・様式 | バロック様式・家具 | ロココ様式・家具 |
年代 諸説あります。 | 1680~ 対抗宗教改革 | ルイ15世 1723~1774 (ルイ16世 1774~1793) |
流行の発信地 | イタリア、主にローマ | フランス、パリ |
作り手とクライアントの関係(傾向として) | 作り手がクライアントが、話し合いで、作られた。 | 職人・デザイナーが一方的に流行の発信 |
家具の特徴 | 装飾性が強い 曲線デザイン 権威ための家具 | 中に詰め物をしたソファの登場。使い手の心地よさを追究。 |
建築と内装・インテリア | ゴシック・ルネッサンス同様、建築と同じデザイン | 建築と内装が別になる。例 建築 ルネサンス 内装 ロココ |
私の感じる、様式の特徴 | 快楽、気持ちの良い所ですん止め。 | 過剰 |
年代
何年を境にして、バロック様式がロココ様式に変わったなどということは、ありません。
「バロック」「ロココ」と名付けたのは後世です。当時の人たちは、最新の流行の家具・インテリアを作っていただけです。後の時代からみれば、ルイ14世と15世ではスタイルが違うよな、何か名前を付けようとなりました。
ここでは「ロココ」はルイ15世時代、ルイ16世は様式が変わるで別になります。
バロック以前の家具、ゴシック(中世)ルネッサンス
現在、既製品で買える、家具の様式は、バロック時代から後の様式です。それは消費者の好みとニーズがあるからだと思います。何より現代生活でも使える家具になったのがバロックからです。
中世では物を入れる木の箱チェストに、人びとは腰を掛けていました、そこには坐り心地をよくするマットもなく、堅い板の上に坐りました。権力を持つものが坐る背板付きのいすも、現代から見ると苦痛です。背板が直角で、足の後ろが板なので立ちずらいです。人はイスから立つとき後ろに足を蹴り込むので、坐り心地がいいとは言えません。

ゴシックのいす
ゴシック・ルネッサンス様式では、まだ家具は王侯貴族のもので、家具は権威の象徴でもありました。
ルネッサンスになると、木の箱のチェストから、私たちが見慣れた家具らしい形の家具が登場します。王家やメディチ家のような上級貴族からですが、私たちの生活に近づきました。

ルネッサンのいす
ゴシックから進化して、背もたれに角度が少しつきました。詰め物が入ったいすです。
バロック 権威のためだけれど、心地良い家具へ。
日本人から見ると、バロックは、派手で装飾過剰にみられます。文化が違うのでいたしかありません。私が考えるバロック芸術は、「快感」という点ですん止めしている芸術です。職人・画家・装飾家など作り手と、クライアントの王侯貴族や教会関係者が話し合いで作り出しているイメージもあります。「ここ気持ちよいよね。」
家具の脚にまだヌキがついています。ロココになるとこれがなくなります。
ロココ すべてに過剰
ロココのキーワードは「過剰」です。家具職人・装飾デザイナーが、流行の品を次から次へ、今の消費社会につながります。そうなると「気持ちいい」がどこだか分からなくなり「過剰」に走り出します。
ソファーの登場はこの時代です。座面だけでなく背にも詰め物が入り、家具が心地よさを追究し始めました。バロック以前の権威のための家具から、利便性を求める設計思想が違う家具の登場です。
ロココらしい家具といえばこれ。デュシェス・ブリゼ ルイ15世の時代、サロンの女主人が控えの間で仮眠をとるために考案された、家具です。過剰というのか貴族のわがままというのか。この時代の貴族が振り切って、わがままをしてくれたお陰で、家具製作技術も向上し、現在は心地よい家具が普通に買える時代になりました。
現在の、「人をダメにするソファー」の先祖の登場です。
でも、こんなことしていたら、フランス革命が起きますな!
見てみましょう。
バロック
曲線使いで重厚感があり、男性的です。
イタリア ヴェネツィアのカサドーロホテル旧Sagrede邸より、貴族のお屋敷です。

ヴェネツィア カサドーロホテル旧Sagrede邸http://www.casagredohotel.com/history/photogallery/

ヴェネツィア カサドーロホテル旧Sagrede邸http://www.casagredohotel.com/history/photogallery/
長いす・セティは、ヴェネツィア独特のスタイル。
ロココ(ルイ15世様式)
ヴェルサイユ宮殿の公式サイトからと思いましたら、写真が小さくて断念。ウィーンのシェーンベルク宮殿の写真です。

シェーンベルク宮殿http://www.schoenbrunn.at/

シェーンベルク宮殿http://www.schoenbrunn.at/

シェーンベルク宮殿http://www.schoenbrunn.at/
ルイ16世様式
ロココに続くルイ16世様式です。
バロック・ロココと続いた曲線デザインのいすの脚、カブリオーレ・レッグ(猫足)が飽きられ、直線デザインに変わりました。ロココ特有の、優美な女性的なデザインは続いていきます。

ニッシム・ド・カモンドhttp://www.lesartsdecoratifs.fr/francais/musees/
2016年マリーアントワネット展 実物の家具が展示

バロック・ロココ家具を買うときは、どこのお店に行けばいいの? http://koten-kagu.jp/2016/10/14/kagu-25/
おススメの本と表
おススメの本ならぬ表、1,000円です。今どき切手・収入印紙を送ると買えます。
株式会社I.S.U。house上柳の フランス家具歴史一覧表


最近出版された、「究極のインテリア ロココとヴィクトリアン」萬田あけみ は眺めているだけでも、優雅な気持ちになります。ロココ好きさんは手元においてください。
西洋家具の歴史で図版中心の記述です。「図でみる洋家具の歴史と様式」中村幸夫
このエントリーでは、「様式」と「スタイル」は同じ意味です。
このエントリーについては、山本のバロック・ロココ家具について考えていること、感じていることを書きました。知識の至らない所、独断に走りす過ぎているところがあります。ご容赦ください。
大学の単位取得試験などで、このエントリーをコピペして、単位取得に失敗しても、当方は責任を負いません。
鎌倉市・神奈川県で猫脚家具を買う方法と、「猫脚」の紹介

マリーアントワネット展
