「古美術」と「絵画の技法」は気になる言葉。
「古美術」という言葉は、美術館マニアには、気になる言葉ですよね。
「骨董商」より「古美術商」の方が、高雅でミステリアスだし。ただの美術鑑賞する人から、一歩踏み出し、美術品を所有に走りそうなワードです。
「絵画の技法」と聞いちゃ、ただ鑑賞するだけの、美術館マニアから、この画家は、技術があるの、ないの見極めができる、マニアになれそうです。
気になる言葉、「古美術」と「絵画の技法」が展覧会名の、展覧会に行ってきました。
展覧会の内容
「たらしこみ」「溌墨 はつぼく」「付けたて」「外暈 そとくま」「金雲」「白描 はくびょう」「裏箔 うらはく」「截金 きりかね」「繧繝彩色 うんげんさいしき」について、説明文と、その技法が使われた、作品が何点か実際に展示してありました。
根津美術館所蔵の、平安時代から江戸時代の、日本の絵画が展示されていますので、小学生が行っても、夏休みの自由研究ができます。大人の鑑賞に耐える展覧会でもありました。
出品作品のPDFは、こちら。
トップは、近年、俵屋宗達、酒井抱一など琳派に人気が集まるようになって、注目されているのが「たらしこみ」です。現代の日本画家もつかいます。絵の具や墨が乾ききらないうちに、水分を多く含む、絵の具や墨をのせ、にじませるそうです。
会場では、「たらしこみ」の説明文が展示の、となりに、伝俵屋宗達「老子図」伝立林何帛「木蓮棕櫚芭蕉図屏風」、喜多川相説「四季草花屏風」と3作品ならんでいました。

根津美術館所蔵 伝立林何帛「木蓮棕櫚芭蕉図屏風」
展覧会の様子は動画がありましたので、雰囲気が分るかと思います。
こちらは時事通信社の、動画 マスコミ向けの内覧会の動画らしいです。
面白かったのは、展覧会前半の、「たらしこみ」「付けたて」「溌墨 はつぼく」「外暈 そとくま」が筆の使い方ただったり、にじみ・ぼかしだったり、の技法で、使われている絵が、水墨画や花鳥図、カワイイ子犬で人気の、丸山派の長山芦雪など、普通に鑑賞される絵画でした。
後半の展示「裏箔 うらはく」「截金 きりかね」「繧繝彩色 うんげんさいしき」は仏画と神道絵画(藤原鎌足像 室町時代)だけでした。
宗教絵画は、金・銀を使い、手間暇かけて、描かれているのだと知りました。信仰の力は凄いと、改めて認識しました。
「たらしこみ」以外の絵画技法を、簡単に解説
溌墨 はつぼく
筆にたっぷり墨を含ませて、はね散らかすように、大胆な筆さばきで書くこと。
付けたて
丸山四条派が得意としたもの。輪郭線を描かないで、一筆で、笹の葉など描きます。陰影や立体も表現します。
外暈 そとくま
白いもの、明るいもの、雪の富士山など描くとき、その外側を墨や、暗い色でぼかします。
金雲
金箔を貼って、雲や霞をかたち作るもの。

根津美術館所蔵 洛中洛外図屏風江戸時代 「金雲」http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/index.html
白描 はくびょう
墨の線のみで描かれた絵、水墨画ではないので、ぼかし・にじみはありません。代表作「鳥獣戯画」
裏箔 うらはく
絵を描く、絹地の裏側に、金箔・銀箔を貼ること。絹目を通すことで。金銀の強い輝きを押さえることができる。
截金 きりかね
金箔、銀箔を、細長い線や、三角、四角。ひし形に切り、絵画や彫刻に貼るもの。仏像の、着るものに、金・銀の幾何学模様があるのが、截金です。
繧繝彩色 うんげんさいしき
色の濃淡の表現を、明るい色から、次第に同色系の、暗い色に、帯状に並べること。
感想 えっ!「私失敗しないので。」
根津美術館から、15分くらい歩くと、六本木ヒルズに行けます。テレビ朝日もありますね。
テレビ朝日の、看板ドラマに、米倉涼子が、スーパー医者を演ずる「ドクターX」があります。
「私失敗しないので。」という日本一センスがないセリフを、決め言葉にしています。
ドラマを見るたびに、何とかならないのか、この決め言葉。と思います。命を預ける医者の「私失敗しないので。」は信じていいものやら、言われても困るな。
医者はともかく、ある程度キャリアのある、芸術家や職人は、「私失敗しないので。」の状態だそうです。若いときから、素人なんぞより、数をこなしています。難しい素材で作るときは、実験と研究をしてから、制作するわけです。成功確率が高いわけだ。失敗してもリカバリーの技術もあるわけです。
琳派の「たらしこみ」も失敗したら怖そうな、絵画技法と思わせておいて、画家たちは、沢山描いているので、コツも分かるので成功率が高そうです。もし思い通りにニジミが、できないときは、上から何か描き込んでリカバリーするわけです。
芸術家は作品、職人は商品と違いはありますが、素人が思っているよりも、難しそうに見える技法での失敗は、案外と少ないのかも知れません。
このあいだ、ニコ生で京都の染織の人が、「失敗作は少ないです。たまに出ても修正して、商品として、売りますよ。」と申していました。画家の世界もこんなもんでしょう。
はじめての古美術展 概要
はじめての古美術鑑賞ー絵画の技法と表現ー
同時開催 書く楽しみ 根津青山(ねずせいざん)の軽井沢の茶
w e b: | サイト内ページ |
会 期: | 2016年7月23日(土)~9月4日(日) |
会 場: | 根津美術館 |
休 館 日 : | 月曜日 |
開館時間: | 10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで) |
入 場 料 : | 一般1,000円(900円)学生(大学・高校)800円(600円) 中学以下無料( )内、前売り・20名以上の団体 受付にて障害者手帳をご呈示で、ご本人様と同伴者1名様まで、団体料金にてご入館いただけます。 詳細はこちら。 |
根津美術館アクセス方法
webサイト: | web http://www.nezu-muse.or.jp/ twitter https://twitter.com/nezumuseum Facebook https://www.facebook.com/NezuMuseum/ |
住 所: | 東京都港区南青山6-5-1 |
電 話: | 03-3400-2536 |
アクセス方法
webページ http://www.nezu-muse.or.jp/jp/access/index.html
地下鉄 銀座線 半蔵門線 千代田線 表参道駅下車
A5出口(階段)より徒歩8分
B4出口(階段とエレベータ)より徒歩10分
B3出口(エレベータまたはエスカレータ)より徒歩10分
バス 都営バス 渋88 渋谷⇔新橋駅前行 南青山6丁目下車 徒歩5分

根津美術館 はじめての古美術鑑賞

根津美術館 庭園