女占い師 カラヴァッジョ 国立西洋美術館のサイトよりhttp://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2016caravaggio.html
2016年3月27日、染井吉野が咲ききらない上野公園で、花見をする酔狂人たちを横目にしながら、国立西洋美術館のカラヴァッジョ展、すいれんでお昼を食べて、東京都美術館のボッティチェリ展をまわり、夕方恵比寿の山種美術館での奥田土牛展のブロガーイベントに参加しました。ボッティチェリ展と土牛のブロガーイベントのエントリーは下になります。
ボッティチェリ展

奥村土牛展 山種美術館


追加情報
※2016年5月25日 入場者が30万を突破しました。
※開館時間を20:00まで延長 入場19:30まで
6月1日(水)~4日(土)、6月7日(火)~11日(土)
カラヴァッジョ展の概要
詳しくはサイトを、確認してください。
国立西洋美術館 | http://www.nmwa.go.jp/jp/index.html |
カラヴァッジョ展 | http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2016caravaggio.html |
特設サイト | |
会期 | 2016年3月1日(火) ~ 6月12日(日) |
時間 | 9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで) |
観覧券・当日券 | 大人1,600円、大学生1,100円、高校生800円、中学生以下無料 |
電話 | 03-5777-8600(ハローダイヤル) |
住所 | 東京都台東区上野公園7-7 |
アクセス | JR上野駅 公園口より 徒歩1分 京成上野駅 徒歩7分 |
カラヴァッジョの、本物が11枚も来日、観るべきです。
会場のベンチで絵を眺めていたら、熟年のお洒落なご夫婦が隣に座りました。そこでの会話。
妻「カラヴァッジョの本物が、少ないじゃないの。」
夫 出品リストを見て「11枚しかないな。」
妻「ほかの40枚は、他の人!」
これを聞いて、私も数えました。この展覧会の構成は、
カラヴァッジョ(本家)11枚:カラヴァジョスキ(追従者多数)40枚
でした。ヨーロッパの美術館に行くより、効率が絶対良いのです。コスパが良いのです。あちらの美術館では、
カラヴァッジョ(本家)1枚:カラヴァジョスキ(追従者多数)40枚
いや、100枚くらい漏れなくついてくるかも。
カラヴァッジョは、若くして死んだので、作品が60数枚しかありません。フェルメールの30数枚よりはあるのです。半分は教会などの壁画で動かせません。移動可能な絵画の30数枚の実に1/3、11枚も今回国立西洋美術館に集まりました。見逃せないぞ。
「女占い師」「バッカス」「トカゲに噛まれる少年」「ナルッキッソス」「果物籠を持つ少年」「メデゥーサ」など、名作、ぞくぞくです。
今回の目玉は。2014年の新たに発見された。「法悦のマグダラのマリア」の世界初公開です。これは飛んでもないことです。行くしかありません。
こんな人にもおススメ!印象派あたりで美術鑑賞をはじめた人が、ランクアップしたいな、ひとひねりした画家で感動したい。そう中級編に進みたい人も、ぜひ行きましょう。
「ルネサンスを越えた男」は本当か嘘か。

カラヴァッジョ展の看板
今回のキャッチコピー「ルネサンスを越えた男。」は学芸員が考えたのでしょうか、広告代理店でしょうか。美術史を多少知る人には、引っかかる言葉です。微妙だよ!
カラヴァッジョの活躍期は、ルネッサンスの次のマニエリスム時代が行詰まったところで。マニエリスムをぶち壊して、バロック時代の扉を開いたアーティストの一人です。「超えた」ではなく「終わらせた」の方がしっくり。
マニエリスム時代は数十年前までは、ルネサンスの後半に含まれていました。
「マニエリスム時代込みの、ルネサンス時代」を「終わらせた」男なら合っています。
バロックの扉を開いたのは、彫刻家のベルニーニ、オランダのルーベンス、教育機関を作ったカラッチ兄弟。何人もいたわけです。「終わらせた」のは、カラヴァッジョ一人ではないのもお忘れなく。
驚異の写実で、ルネサンスと別な感動をあたえる画家というのなら、当たります。「ルネサンスを越えた男。」
カラヴァジョスキ、ヨーロッパ全土にいた、追従者達。
日本人なんで、カラヴァジョスキ=カラヴァッジョが好きなの。とギャグを思いつきました。この人たちは。本当に好きで好きで、カラヴァッジョの絵を勉強したのです。カラヴァッジョは波乱万丈過ぎる人生を38歳で終えました。生前は弟子を取るのも、教授もしなっかたので、不思議なことです。
イタリア人画家のみならず、ヨーロッパ各国からローマに留学した若手画家たちが、画法を学びました。才能のある画家も多く、ヨーロッパ全土にカラヴァッジョ風の絵をもたらしました。

ジョウルジュ・ド・ラ・トゥール「聖トマス」国立西洋美術館
フランスの画家ラ・トゥールもその一人。ラ・トゥールの静謐な絵は日本で人気があり。この画家だけ国内に所蔵している美術館がありまして、国内からの出品の2枚の絵が展示されていました。この人はカラヴァッジョの影響かから離れて、独自の表現に進化した画家です。
感想、カラヴァッジョは、やはり追従者カラヴァジェスキさん達より、良い絵を描いていた。
展覧会は、各コーナーに、カラヴァッジョが一枚と同じテーマのカラヴァジョスキたちの数枚の絵画が展示されていました。当然見比べることになります。
私は、カラヴァジョスキのことを買っていまして。本家と伍するくらいに才能のある、画家たちと思っていました。ウイーンの美術史美術館に行ったとき、一部屋カラヴァジョスキだらけの部屋がありまして、「カラヴァッジョがいっぱーい!」と当時の私は大感激しました。カラヴァジョとカラヴァジョスキの双方が好きです。
今回カラヴァッジョと比べて観ると、綺麗でエロティックな絵画、「バッカス」などは追従を許さない技術・表現力がありました。人物と静物が一緒の絵は彼の独壇場です。

Painting by Caravaggio entitled “Bacchus”, in the Uffizi Gallery in Florence1990Caravaggio, Michelangelo Merisi, known as (1571-1610)1597Florence – The Uffizi Gallery
国立西洋美術館http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2016caravaggio.html
世界初公開の「法悦のマグダラのマリア」を比べると。
今回の展覧会のいくつもある目玉のひとつ。2014年に発見され、世界初公開になった「法悦のマグダラのマリア」カラヴァッジョと、同じテーマでジョヴァンニ・フランチェスコ・グエリーエーリと、波乱万丈な女流画家で有名なアルテミジア・ジュンティレスキが展示されていたのです。
カラヴァッジョのほうが神々しくて精神性が高かったです。やはりシンプル。対してマグダラのマリアはヌードをかく口実されていたので、カラヴァジョスキの2人はヌードで、エロティックに描かれています。上手いのですが構図が込み入ったり装飾が入り、本家の方が上手でした。
本家が、カラヴァジョスキより凄いところ。
カラヴァッジョは、パイオニアであるので、自由な表現をしている。追従者はワクのとらわれています。手塚治虫と全漫画家の関係に似ています。
「女占い師」などカラヴァッジョの絵は、シンプルです。ルーブルのシモン・ヴーエはいろいろ増やして描いています。これもパイオニアだからでしょうか。
女性はエロくないが、男はちょっとした仕草がエロい。「洗礼者ヨハネ」を見ると美青年が動くだけでも胸キュンという感じです。同性愛者ですな。
「ナルッキッソス」に、カラヴァッジョの表現の深さを観た。

「ナルキッソス」ローマバルベリーニ宮国立古典美術館http://www.galleriaborghese.it/barberini/it/narciso.htm
カラヴァッジョの絵で一番好きなのはと、問われると「バッカス」です。綺麗で艶めかしくて華やかで、今回再会できて良かったです。
会場で本物を観て、これはバロック絵画のジャンルを超えて凄いと思ったのが。「ナルキッソス」でした。ギリシャ神話で、美少年ナルッキソスが水に映った自分の姿に恋をして、眺めてい水に落ちて死んだ、水仙に変身した有名な話です。
生々しく、人間の本性むき出しの姿、衣服のしわがくどいくらいに写実されています。必死の行為が醜く狂気なのか。ずどーんと心に来ますね。
古代ギリシャの少々オツムの弱い美少年だけに起きた、対岸の悲劇が。この絵では誰にでもある、狂気と破滅になりました。怖い絵です。
奥村土牛展 山種美術館


ボッティチェリ展

2016年4月4日初出
2016年5月28日加筆
2016年9月26日リンクと画像追加