現実を知っていても、平安貴族は優雅であってもらいたかった「殴り合う貴族たち」繁田信一著

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わたくし、国文科出身でございます。

10歳で平家物語を原文で読み、高校在学中に日本文学全集を読破、私って凄~い。
世の中には、もっと凄い読書マニア、天才がいるので、たいしたことはございませんが。

でも、その辺の小学生、高校生より、はるかに多くの書籍、とりわけ、文学と歴史書を読んできました。

卒論のため、歴史史料を読みまくる

大学に入学して、卒論のため中世文学のゼミに入りました。そのころには平家物語を読みすぎて、飽きてしまい、慈円の愚管抄を卒論にしました。

卒論のために師匠の志村有弘先生に指導されたことは、史料に当たること、貴族の日記、寺社の日録を読むことでした。つまるところ、刑事ものドラマの「ウラを取る」作業をしたすらしました。

国文学では、古事記から現代文学まで、歴史的資料で「ウラを取る」ことは、オーソドックな研究方法です。

平安文学研究も、貴族の日記を読んで、研究するのです。

明治以降の、史料がアリスギの文学研究者には、近視眼的に作者の日記とか書簡集とか、作者のお友達の作品とかで、お書きになってるのもありますが。

地味に、歴史資料に、どっぷりつかるのが国文学です。卒論の史料を読み込んでいるときは、史学科じゃないかと、錯覚しました。

 電子書籍、アップルのibookで、買いました。

「殴り合う貴族たち」 繁田信一著なのですが、ibooksで買いました電子版です。

以前「のぼうの城」を買って、電子書籍で読むことにかなり違和感を感じました。

私は数えてはいませんが、かなりの本を所有している上に、読書中毒者なのです。部屋のインテリアの美観のため本を減らしたく、電子書籍に少しでも慣れたいと思い、数年前話題になった、「殴り合う貴族たち」を買ってみました。

読書中はふんふんと、思いました。けれど読後感が悪い。

読書中は、学生時代のことを思い出しながら、貴族が陰湿に、敵対する貴族に対するのは、ある、ある、男の世界だしと読みました。平安文学研究の副産物ですな、読書中は好感を持って読みました。

読了後、すっきりした印象を持てませんでした。

古記録を読める人ならば、平安時代の暴力事件記をデータ化するのは、労力がかかるとはいえ、出来るんだよ。

最上流階級のアウトレイジを書き集めて、なんで紫式部、清少納言はじめとする物語作者はそれを書かなかったのか。

貴族が日常詠んでいた、和歌には暴力のかけらもないのか。それを精神の領域まで踏み行って考察して欲しかったです。

 平安貴族300人で、暴力事件そんなに起こるか?

うろ覚えのデータなのですが、平安貴族は300人くらいしか、いなかったそうです。大和民族の中のたった300人。圧倒的な権力と富と教養を持っている300人で、こんなに暴力事件が起こるのか。
平和ボケ大国・日本にいるけれど、ご近所さん300人中で傷害事件を起こしたなんて聞かない。

まるで偏差値の低い男子高校みたい、そこでもレイプ殺人までは滅多にやらないでしょう。そう思うと暴力事件多すぎの印象を持ちました。

暴力と王朝文学との関係性を考察して欲しかった。

後味が悪いです。いつの時代だって、空想の物語はあります。現在はセカイ系と言われるジャンルがもてはやされて「進撃の巨人」(読んでいません)が大人気です。

物語を生み出した現実との関係を、深く考察して、納得させる結論があったらと感想を持ちました。

こちらを、おすすめしたい。

繁田信一さんのamazonのページの右側の「こんな商品も買われています」にお師匠 様の名前が 載っておりました。こちらの方をお買い上げください。こちらの方が面白いです。文学界のドン???にして、陰陽道研究の第一人者です。


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2014年7月1日初出
2015年11月14日改訂
2016年8月19日改訂
2021年6月28日改訂

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